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レタスビッグベイン病

本病は1973年頃に和歌山県白浜町のレタス栽培地の一部で発生が確認され、その後2年間でほぼ全域に拡大した。次いで、長野県小諸市、静岡県磐田市と広がり、1982年には静岡県島田市にも発生が認められ、その後は国内のレタス栽培地での発生が普遍的に見られるようになった。やがて香川県、佐賀県、愛媛県などでも被害が問題視されたが、最近ではまた問題の地域は限定されるものの話題の病害として再注目され始めている。

発生の生態
病原菌
  • 病原体はウイルスで和名をレタスビッグベインウイルス(Lettuce big vein virus略語はLBVV)と言い、1934年に土壌伝染をするウイルスとして世界で最初に報告され、イギリス、イタリア、ドイツ等ヨーロッパ諸国でも発生が知られている。
  • LBVVは棒状ウイルスで、このウイルスは接木や土壌伝染はするが、通常の方法では汁液接種できず、アブラムシなどでの昆虫伝染もせず、種子伝染もしない。
  • 病原ウイルスの寄主範囲はきわめて狭く、レタスの他はオニノゲシだけが知られている。
病徴
  • 葉脈周辺が退緑化し、葉脈が太く見えるところからこの病名があり、退緑部と緑色部との違いが明瞭である。
  • 症状は葉全体の葉脈に沿って現れ、退緑色部分が網状に広がる。結球部では葉色がうすいために病徴は不明瞭である。
  • 結球前の病株では葉縁のちぢれが健全株に比べて顕著なので病徴の激しい株は離れた所からでも識別できる。
  • 病株は枯死したり、根に異常を生じたりすることは無いが、生育が遅れて球の肥大が劣るために、収量、品質の面で問題となる。
  • 本病は虎斑病(とらふ病)とも言われる。

生活様式
  • 発生は10月~4月の低温期栽培のものに限られる。
  • 9月下旬播種、10月上旬移植 、10月下旬定植 、1~2月採りの作型では育苗中の感染が多いと見られ、通常は定植後間もない11月中旬頃から発病する。
  • 11月下旬に定植する3~4月採りの栽培型では、12月下旬頃から発生が多いが、春には結球部の症状はうすれて病徴が顕著でなくなる。
  • 10月上旬に定植する年内採りの栽培型では生育初期に発病が見られ、結球後期に発病することもあるが症状は軽い。
  • 本病は連作圃場で発生し、同じ苗床で育苗した苗で発生することから土壌伝染である。
  • この土壌伝染はタバコモザイク病のような土壌伝染とは違って、土壌中で生活している古生菌の仲間のオルピジュウム菌(Olpidium)と呼ばれるかびにLBVVが媒介されて伝染する媒介者存在型土壌伝染である。
  • 発病土は熱処理で病原性を失う。
  • 3週間風乾しても病原性に影響はない。
  • レタス苗は無加温下では6日以上の根部接触で、また加温下では1日の根部接触で感染が起こるとされている。
  • 病土および病根内でのLBVVの病原性保持期間は長期に亘り、室内乾燥土で3ヶ月以上、水洗後風乾病根では33ヶ月以上、病根湛水(ポット)では4ヶ月以上である。
  • 本病の発病には移植時期の違いによる地温の影響が大きく、平均地温17~18℃くらいのときに移植すると、多発して発病も早くなる。
  • 土壌pHは酸性側で発病が少なく、pH5.0では発病が認められない。
  • 土壌pHが中性~アルカリ側では発病が多い。
  • 発病連作圃場で、土壌pHが酸性のために発病が見られなかった株でも、アルカリ土壌に移植すると発病する。
  • 本病の発生要因として土壌pHのアルカリ化の影響が大きいことが知られている。
防除のポイント
耕種的防除
  • レタスビッグベイン病は土壌中のオルピジュウム菌の媒介によって伝搬されるので、媒介者であるオルピジュウム菌を除去する対策を考えましょう。
  • 夏季ハウスの密閉処理による太陽熱利用土壌消毒
  • 露地でも湛水マルチによる太陽熱利用土壌消毒
  • 無病育苗土の使用
  • レタス栽培に影響を与えない範囲での土壌pHの酸性化
  • 発病圃場での連作の回避
  • 発病株根部の鋤き込み禁止
薬剤的防除
  • クロールピクリン(クロルピクリンくん蒸剤)またはキルパー(カーバムナトリウム塩液剤)で土壌消毒を行いましょう。ただし、クロールピクリンとキルパーの混合使用は化学分解反応がおこるので厳禁です。
  • レタスビッグベイン病に登録がある農薬は、アミスター20フロアブル(アゾキシストロビン水和剤)、ダコニール1000(TPN水和剤)、トップジンM水和剤(チオファネートメチル水和剤)、フロンサイド粉剤(フルアジナム粉剤)があります。

データ作成2013/4/16

 

■ご注意

文中に記述のある農薬の登録内容は、すべて上記データ製作日時点のものです。ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。

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