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リゾクトニア病

リゾクトニア属菌は、野菜類だけでなく普通作物、花き、牧草、材木などを侵します。また、病原菌自身にも多くの系統があり、そのために被害を受ける作物の種類や病徴は複雑です。野菜類では苗立枯病(Damping off)で代表されます。

発生の生態
病原菌

病原菌はかびで、日本での問題の菌はRhizoctonia solani(リゾクトニア・ソラニ-)と呼ばれています。本菌は黒褐色化した古い有機物からは栄養を摂取して増殖することはほとんどできず、新しい有機物のみから栄養をとって繁殖しています。さらに、細菌や放線菌が土壌中で顕著に増殖するとリゾクトニア属菌の生育は圧迫され、衰退を助長するような条件が多くなります。

病徴

作物の種類によって若干異なりますが圃場での自然発病では次のような病徴が見られます。

  • 紋枯れ イネ、ショウガ
  • 芽枯れ イチゴ
  • 株枯れ(地際枯れ) ハクサイ、ホウレンソウ、レタス
  • 苗立枯れ ナス科野菜、ウリ科野菜、アブラナ科野菜、ネギ類、ニンジン、ゴボウ
  • 黒あざ ジャガイモ、ゴボウ
  • 根腐れ ニンジン、ナガイモ、テンサイ

これらの病徴の中で、苗立枯れの場合は発芽間もない子葉直下の胚軸が幼弱な時期には立枯れ状態になりますが、胚軸の形成層が強固になると病徴の形跡を残したまま維管束が生存し、株枯れは回避されます。

病原菌の種別(寄主性を異にする系統)
  • 地上型の系統(培養型ⅠA、ⅠB) 地上部の茎葉を主に侵して紋枯れ、葉腐れ、くもの巣症状を起こします。
  • 地表型の系統(培養型Ⅱ、ⅢA、ⅢB) 地際部分の胚軸や葉柄、茎を枯らして苗立枯れ、茎腐れ、芽枯れ、株腐れ、尻腐れ症状を起こします。
  • 地下型の系統(培養型Ⅳ) 根部を侵して黒あざ、根腐れ症状を起こします。
  • 地上型の系統は酸素不足条件下では活力が弱く、越冬は菌核で行われます。
  • 地表・地下型の系統は、地上型に比べて土壌中での菌糸生存、生育もよく、酸素不足がちな嫌気条件下でもよく繁殖します。
  • 病原菌の生理的性質と畑の発病状態とは密接に関連しています。
生活様式
  • 病原菌は菌糸、厚膜化細胞、菌糸塊、菌核を作り、土壌中では後者三種の器官が耐久体として越冬、越年します。
  • これらの器官は適当な水分と湿度条件が与えられるとすぐに菌糸を伸ばし、根の分泌物に刺激されて繁殖します。
  • 土壌中の菌糸の生育量と発病との間には密接な関係があります。
  • リゾクトニア属菌は土壌水分がむしろ乾燥気味のとき活動しやすいです。
  • 土壌pHは、微酸性で発病しやすく、酸性土壌では住みにくいようです。
  • 野菜に被害を起こす系統としては、地表~地下型が多く、酸素不足の状態でも生育できるため、耕運機などで地中深く埋め込まれてもすばやく地上部に現れて、苗立枯れや株腐れを起こします。
  • 春~夏に青刈り作物を鋤き込むと、病原菌の生育はよくなり、土中の菌糸密度が高くなって被害を大きくします。
防除のポイント
耕種的防除
  • 未分解有機物や青刈り植物のすき込みを行わないでください。
  • 堆肥は完全堆肥を施用してください。
  • 湛水や田畑輪換は苗立枯れを起こす系統を減少させるので、極力実行してください。
  • トウモロコシやイネ科牧草などを組み入れた2~3年輪作は病原菌の密度減少に働きます。
  • 土寄せはリゾクトニア属菌による被害を多くするので、ゴボウ、ニンジン、ハクサイ、ダイコン、ホウレンソウではできる限り行わないで下さい。
薬剤的防除
  • 病原菌に汚染されている圃場や連作地は必ず土壌消毒しましょう。
  • リゾクトニア病に対して登録のある農薬には、バシタック水和剤75(メプロニル水和剤)、オーソサイド水和剤80(キャプタン水和剤)、バリダシン液剤5(バリダマイシン液剤)、リゾレックス水和剤(トリクロホスメチル水和剤)、モンカット水和剤(フルトラニル水和剤)など多くの種類があります。

    データ作成2013/4/15

 

■ご注意
文中に記述のある農薬の登録内容は、すべて上記データ製作日時点のものです。ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。

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