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ボトリチス属菌

ボトリチス属菌が原因で起こる病気には、和名で灰色かび病(英名でGray mold)、腐敗病(Rot)、白斑葉枯病(Leaf Blight)、灰色腐敗病(Gray-mold neck rot)、菌糸腐敗病(Mycerial neck rot)、および小菌核腐敗病(Small sclerotial neck rot)など問題の空気伝染性病害がある。
ボトリチス属菌は半腐生的な性質を持っているが、一般的には寄生力も強い。主な野菜類に発生するボトリチス属菌病は、ウリ科(キュウリなど)、ナス科(トマト、ナスなど)、レタス、豆類、イチゴなどの灰色かび病、タマネギ、ニラの白斑葉枯病、タマネギ灰色腐敗病、ネギの菌糸腐敗病および小菌核腐敗病などである

発生の生態
病原菌
  • ウリ科、ナス科、レタス、豆類などの灰色かび病を起因する病原菌はBotrytis cinereaボトリチス シネリア)の1菌種。
  • タマネギ、ニラの白斑葉枯病はB. byssoideaボトリチス バイソイジア)、B. cinereaボトリチス シネリア)およびB. squamosaボトリチス スカモサ)の3菌種。
  • タマネギ灰色腐敗病はB. alliiボトリチス アリー)の1菌種。
  • ネギ菌糸腐敗病はB. byssoideaボトリチス バイソイジア)の1菌種。
  • ネギ小菌核腐敗病はB. squamosaボトリチス スカモサ)の1菌種。
  • 病原菌の分生子柄は褐色で菌糸はやや太く、先端付近および途中で樹枝状に小枝を分枝する。
  • 頂端部分には大型(楕円形あるいは卵形)分生子や小型(円形)分生子が多数形成される。
  • 分生子は蒸留水など純水中では発芽しないが、宿主上では容易に発芽して短時間で宿主に侵入・感染を起こして発病に至る。
  • 不良環境では小菌核や扁平な褐色菌核を形成して次作の1次伝染源の役目を果たす。
病徴
  • B. cinereaボトリチス シネリア)によるキュウリ、トマト、ピーマン、イチゴ、レタスなどの灰色かび病は被害部に灰色のかびを生じる。これは菌糸、分生子柄、分生子などで、のちに不整形の菌核が形成される。
  • タマネギでは菌の種類により発生部位や病徴が異なり、B. alliiB. byssoideaでは鱗茎腐敗、ネギおよびニラのB. squamosaでは葉身上の白斑が主症状である。
  • ネギのB. squamosaでは根深ネギの土中の葉鞘部分に腐敗を起こす。
  • 冬季のビニールハウス内での簡易軟白ネギ栽培で発生するB. byssoideaでは、罹病と共に著しい生育不良および葉鞘と葉身に暗緑色水浸状の小斑を生じ、白色~淡緑色の菌糸が蔓延・密生する。
  • このような被害株では外葉の腐敗で内葉が突出する、いわゆる胴割れ症状が見られる。

生活様式
  • ボトリチス属菌は、一次伝染源は春季越冬菌核に形成される分生子である。
  • 作物の生育期間中は分生子によって伝染を繰り返す。
  • 普通地帯では晩秋~晩春期、低温地帯では晩春~初夏に低温、高湿度条件に菌核が遭遇すると、菌核は発芽して菌糸を生ずる。
  • 菌糸は高湿度の明所で分生子を形成し、空気湿度の低下に伴って分生子は空中飛散して伝染する。
  • 貯蔵中の野菜類では低温、暗黒、高湿度条件下で菌核が発芽し、菌糸接触伝染で発病に至る。
  • 軟白ネギ菌糸腐敗病の発生は温度(10~15℃)、湿度(ビニールハウスで水滴が滴下するような部分)、軟白用遮光資材などが発病と蔓延に影響する。
防除のポイント
耕種的防除
  • 被害物や残渣の除去。
  • 多湿環境の改善(密播、密植を避ける。排水を良くする。通風と採光に努める)。
  • 無加温ハウスや10~15℃の低温条件環境の改善。
  • 昼夜の温度較差が大きくならないような温度制御。
薬剤的防除
  • ネギボトリチス葉枯症に登録のある農薬には、ロブラール水和剤(イプロジオン水和剤)があります。
  • ニラ白斑葉枯病に登録のある農薬には、アミスター20フロアブル(アゾキシストロビン水和剤)、ストロビーフロアブル (クレソキシムメチル水和剤)、トップジンM水和剤 (チオファネートメチル水和剤)、ボトピカ水和剤 (バチルス・ズブチリス水和剤)、ポリオキシンAL水溶剤(ポリオキシン水溶剤)などがあります。
  • タマネギ灰色かび病と灰色腐敗病に登録のある農薬には、アフェットフロアブル(ペンチオピラド水和剤)、カンタスドライフロアブル (ボスカリド水和剤)、シグナムWDG(ピラクロストロビン・ボスカリド水和剤)、ジマンダイセン水和剤(マンゼブ水和剤)、ストロビーフロアブル(クレソキシムメチル水和剤)、ベルクート水和剤 (イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤)、ベルクートフロアブル(イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤)などがあります。
  • 発病後の薬剤防除は困難を伴うので、発病初期を的確に捉えて早期防除に徹しましょう。
  • ネギ・タマネギなどは散布液が付きにくいので、必ず展着剤やや多めに添加して葉が十分濡れる程度に丁寧に散布しましょう。
  • ウリ科・ナス科・レタスなどの野菜類には登録農薬が多いので、適正使用基準を厳守して正しく使用しましょう。

データ作成2013/4/18

■ご注意■

文中に記述のある農薬の登録内容は、すべて上記データ製作日時点のものです。ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。

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