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トウガラシ・ピーマンのモザイク病

野菜には非常に多くのウイルスによる病害があり、トウガラシ・ピーマンにはモザイク病としてキュウリモザイクウイルス(CMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ソラマメウイルトウイルス(BBWV)を病原ウイルスとするものの他に、黄化えそ病(TSWV)、トウガラシ潜在ウイルス(PCrV)等が知られている。これらの病原ウイルスは、虫媒、汁液、接触、種子(苗)など極めて多様な経路で伝染するが、TMVはこれらの他に重要な伝染法として土壌伝染がある。
TMVの土壌伝染は、レタスビッグベイン病のように媒介者存在型土壌伝染ではない。TMVは土壌中に存在するウイルスだけの単独感染でトウガラシ・ピーマンの根に感染して発病する。そのため、前作から次作までの期間が短いほど感染力が高まる。土壌伝染後は、汁液、接触、種子(苗)などで二次、三次の伝染を起こすので土壌伝染は伝染法として重要であり、それは収量や品質にも大きく影響する。

発生の生態
病原菌
  • 病原体はウイルスで和名をタバコモザイクウイルス(TMV)によるモザイク病と呼ばれる。
  • ウイルス粒子の形態は棒状(300×18nm)で、電子顕微鏡では見ることが出来るが、光学顕微鏡では見ることが出来ない無生物である。
  • この無生物が一旦トウガラシ・ピーマンに感染・侵入するとウイルスの指令で正常な植物細胞中で増殖して、あたかもガン細胞のように正常細胞を破壊して、モザイク症状を発現する。
  • TMVには多くの系統があるが、わが国のトウガラシ・ピーマンを侵す系統はトマト系(TMV-T)、普通系(TMV-OM)、トウガラシ系(TMV-P)およびトマトに寄生性を示さない系統(TMV-U)が知られている。
病徴
  • TMV-TおよびOMに対しては、わが国の実用品種の多くは抵抗性を持つために全身感染はしない。
  • 時に抵抗性品種でも、苗の地際部や主根に局部感染して地際黒変症を生じて生育不良を招くことがある。
  • 感受性品種では頂葉の黄化・壊疽を伴って成葉はモザイク、茎壊疽を生じて落葉する。
  • TMV-Pでも新葉の黄化と共に若い葉に淡黄色の斑紋が現れ、凹凸を生じて顕著なモザイクを現すが、成葉では次第にモザイクは不鮮明となる。
  • 果実にも黄色の斑紋が現れ奇形となる。
  • またCMVのモザイクにも類似するが、TMV-Pでは、柳葉や壊疽症状を現さない。
  • TMV-Pに対する実用性の抵抗性品種はなく、そのため発生すると収量、品質の低下を招く。

 

生活様式
  • 全国各地のトウガラシ・ピーマンに広く発生し、特に暖地の施設栽培での発生と被害が大きい。
  • TMV-T、TMV-OMはトマトに全身感染するが、抵抗性品種は侵さない。
  • これに対してTMV-PはTMV抵抗性品種のトウガラシ・ピーマン品種には全身感染するが、トマトは侵さない。
  • TMV-P系の第一次伝染源は汚染種子と汚染土壌である。
  • TMVは物理的に安定なウイルスであるため発病後は、農作業や株の接触などで簡単に汁液伝染して隣接株へ二次伝染する。
  • 病土および病根中でのウイルス活性持続期間は土壌条件で異なるが、畑状態では通常6ヶ月内外である。
  • 本病の発生には移植時期の違いによる地温の影響が大きく、平均気温15~25℃のときに移植すると発病が高くなる。
  • 発病した圃場に連作すると次の作付けまでの期間が短いほど発病率は高い。
  • 次の作付けまでの期間が前作から3ヶ月以内では高率に土壌伝染が起こる。
  • 発病圃場は湛水しても残渣の分解が不十分な場合には、容易に土壌中の残渣内ウイルスは不活化しない。
  • 適度に湿った高温条件下では被害残渣の腐敗が早く、このような場合には短期間内でのウイルスの不活化が起こり感染が低下する。
防除のポイント
  • 発病圃場は排水をはかり、高温下での太陽熱消毒を行い被害残渣の早期分解を促進させる。
  • 蒸気消毒(90℃以上30分)を行う。
  • 発病圃場では可能な限り被害茎葉や根を取り除き、更に残根の分解を早めるために石灰窒素などを施用して分解・除草・殺菌作用を期待する。
  • TMV-P系の弱毒ウイルスの利用も効果的との試験例がある。但し、弱毒ウイルスの使用に当たっては事前に周到な準備と、指導者の監督の下で使用する必要がある。

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