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アルタナリア属菌

アルタナリア属菌Alternaria sp.)は、属名の覚え易さ、空中雑菌、特徴ある分生子の形態などによって広く知られている。本菌の種の特徴は分生子の諸形態に頼るが、その大きさや形は、その生育環境によって著しく変異を示す。
自然界における本菌の分布は、まさに雑食性で、腐生菌として空中、土中さらに枯死植物体上から頻度高く発見される。
その他、植物寄生菌、穀物・食品の汚染菌、気管支喘息、アレルギー性疾患などとしても注意されている。
植物病害関係では重要病害も多く、各種の農作物に黒斑病(アブラナ科野菜類、ニンジン)、黒すす病(キャベツ)、黒葉枯病(ニンジン)、夏疫病(ジャガイモ)、白星病(トウガラシ)、輪紋病(トマト)などの病名で知られている。

発生の生態
病原菌
  • アルタナリア属菌は菌糸、分生子梗、分生子をつくる。
  • 分生子は長棍棒状、円筒形、俵状を呈し、種により横隔膜、縦隔膜をもち、長い嘴部(Conidial beak)を有するものと、嘴が殆ど見られない種類のものがある。
  • 病原菌の宿主範囲はウリ科、ナス科、アブラナ科など極めて広く、これら多くの野菜類を侵す。
病徴
  • 発生する野菜類により病徴は異なるが、普通は発芽後間もない時期から生育期後半までの栽培全期間に亘って発生する。
  • ネギ・タマネギでは、葉、花茎に褐色で円形または紡錘形の病斑を形成し、その上にすす状の分生子を生ずる。
  • アブラナ科野菜類では中心部淡褐色または灰褐色で同心輪紋を生ずる。
  • ニンジンの黒斑病は主に根、幼苗に、また葉、花茎、花器にも発生し、貯蔵中には根部も侵す。黒葉枯病は8月中下旬から発生し始め、葉、葉柄、茎に発生し、病斑は小さく、黒褐色を帯びた楕円形で激発すると葉縁が上面に巻き上がる。
  • トマト、ジャガイモでは高温、乾燥期に発生し、病斑は円形、褐色、黒褐色で同心輪紋を生じて乾枯する。ジャガイモでは夏疫病と呼ばれる。

生活様式
  • 病原菌の発育適温は25℃、生育範囲は15~40℃である。
  • 菌糸あるいは胞子の形で被害残渣や種子で越年伝染する。
  • 種子伝染の場合は種子胚葉組織内の潜在菌糸で発芽時に幼根が侵される。
  • 宿主に感染後、適温(25~28℃)、高湿下では2~3日で発病する。
防除のポイント
耕種的防除
  • 発生地には栽培しない。また連作しない。
  • 堆肥を多用し、地力を高めて生育期に肥料切れを起こさない。
  • 施肥は緩効性の肥料を施用する。
  • 被害残渣は圃場に放置せず乾燥後焼却処分する。
  • 種子伝染防止のために健全種子か、消毒済み種子を使用する。
  • 生育後半から肥料切れを起こさせないように追肥を適宜行う。
薬剤的防除
  • ネギ属、アブラナ科野菜、ナス科野菜、ウリ科野菜などのアルタナリア属菌による病害に対する地上部散布登録薬剤の種類は多いので、安全使用基準を厳守し、発生初期から十分量を的確に散布する。
  • 種子消毒の励行。

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