青枯病
青枯病は、その生育温度が高いために、以前は夏季および夏秋作の作物に限られていました。しかし、最近は施設栽培での連作も影響して促成栽培でも発生し問題を起こしています。
本病にかかる作物にはトマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、ゴマ、タバコ、イチゴ、ダイコン、カブ、ジャガイモなどがあります。
発生の生態
病原菌
- 病原菌は細菌の一種で土壌伝染と地上部からの農作業などの傷口から感染するRalstonia solanacearumと名付けられています。
- 病原菌には病原性や生理的性質を異にする多くの系統があります。
- その系統は、トマトに強い病原性がありますが、ナスやゴマに病原性が無いもの、トマト、ナスに強い病原性のものでも、タバコ、ゴマに病原性の無いもの、トマト、タバコで病原性が強く、ナス、ゴマには病原性の無いものなどがあります。
- どの系統でもトマトには病原性が有ります。
- 病原菌の生育適温は35~37℃の高温性菌で、地温が20℃以上になると発病し始め、25~30℃が発病適温です。
- 生育最適pHは6.6です。
- 本病原菌は乾燥条件には弱い性質があり、乾燥土や種子の表面に付着した菌は5日以上生存することは出来ません。
- 多湿土壌や、湛水条件下では長期間生存することが出来ます。
- 病原菌の増殖には酸素が必要で、そのため地表層ほど病原菌の増減は激しくなります。
- また、栄養源も必要でこの供給源としては作物の根が非常に重要な役割を果たしております。
- 病原細菌は土壌水中を泳いで根に集まります。この行動を“い集”と呼んでいます。
- 茎の基部や根の先端特に傷口などへの“い集”は、病原細菌の特異的な性質です。
病徴
- 発病はじめ、日中は先端の茎葉が急に水分を失ったように萎凋します。
- 朝夕や曇天の日には一時回復したように見えます。
- やがて7~10日ほどたつと次第に青枯れとなります。
- さらに病徴が進むと下葉から枯れあがり、遂には枯死します。
- 被害を受けた細根は暗褐色、水浸状となって腐敗し、病勢が進むと大部分の根は消失・脱落します。
- 株元地際部茎や主根を切断すると維管束部が変色し、暫くたつと切断部から白濁した細菌液が流出してきます。
- ダイコン、カブでは肥大根を切断すると、根の外部から中心部に向かって放射線状に黒褐色に変色しています。この症状は黒腐病の病徴によく似ているので注意しましょう。
- 青枯病は、被害株の地際部茎あるいは主根の切断片を、水を入れた容器に差し込むと、白濁した細菌液が流出するので診断できます。
生活様式
- 青枯病が常発する畑に寄主作物を植えると、その根の付近に病原菌である青枯病菌が集まってきます。
- 病原菌は根の傷口や根の分岐部に自然に出来た破裂溝から作物内に侵入します。
- 侵入した細菌は盛んに増殖し、維管束部に侵入して、その働きを阻害して作物を萎れさせます。
- 同時に根から土壌へ病原菌がしみ出し、土壌中の細菌密度はますます高くなり、二次、三次の感染の機会をつくります。
- この現象は高温多湿条件下で激しく起こります。
- 台風や豪雨などは病原細菌の分散を激しくし、発病も助長し、特に低湿地では壊滅的被害を受けます。
- 以上をまとめると、越冬場所(被害作物の残渣・本畑土壌)→寄主作物(根圏い集・根圏増殖)→寄主体侵入(根の傷口・根の分岐部・一次感染)→作物体内増殖→発病→根から土壌への病原菌の排出→作物体侵入(二次感染)←芯どめ・芽かき・中耕・除草など農作業。
防除のポイント
- 栽培は無病地を選びましょう。
- 常発地の連作は避けましょう。
- 石灰を10a当たり200kg前後全面散布し、土壌とよく混和しましょう。
- 排水を良好にし、土壌中の細菌の移動を抑制しましょう。
- 移植、定植や除草の時には根に傷をつけないように注意しましょう。
- 病株は早い時期に抜き取り処分しましょう。抜き取り後には石灰を施し十分に攪拌しましょう。
- 被害残渣の処分を徹底し、圃場衛生に努めましょう。土壌消毒で病原細菌、土壌害虫、土壌センチュウの殺菌および駆除を行いましょう。
- タバコ、トマト、トウガラシ、ピーマン、ナス、ゴマなどの発病後作には注意しましょう。
- トマト、ナスなどでは抵抗性品種あるいは抵抗性台木を利用しましょう。
このページに掲載のイラスト・写真・文章の無断の転載を禁じます。
全ての著作権は株式会社武蔵野種苗園に帰属します。