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軟腐病

軟腐病にかかる主な宿主(野菜類)は、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、カリフラワー、レタス、ショウガ、セルリー、パセリ、ネギ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ピーマン、チンゲンサイ、コマツナ、ニラ、カブ、ニンニク等があり、極めて多数の野菜類を侵し、それらを軟化腐敗させて悪臭を放ちます。また市場病害や貯蔵病害としても問題を起こします。本病は発病後の防除は極めて困難です。

発生の生態
病原菌
  • 病原菌は細菌の仲間で、病原菌名はPectobacterium carotovorum(ペクトバクテリウム カロトボラム)と名付けられ、極めて多数の葉根菜類や果菜類に対する寄生力は強く、至るところに分布しております。
  • その証拠に雑草も生えていない道路の土壌からもしばしば病原菌が分離されます。
  • 病原菌は驚くべき病原性の広さを持ち、根の分泌作用や土壌団粒に助けられて土壌中で長く生存できます。
  • 発育温度は2~40℃、最適温度は30~35℃の高温菌です。
  • 軟化腐敗は病原菌が分泌するペクチナーゼと呼ばれる酵素によって作物類の細胞構成物質であるペクチンが溶解されて起こります。
  • 活動し易い土壌pHは6~7です。
  • 病原菌は地表面から25cmくらいまでに生存しておりますが、70cmくらい深いところにも分布しております。
  • 病原菌は水、空気よりもむしろ土壌の栄養源によって増殖が大きく影響されます。この栄養源は作物の根から分泌されるものです。
  • 病原菌は直射日光などによる乾燥に弱い性質を持つ細菌です。
病徴
  • 幼苗期に発病すると地際部が水浸状に変色し、葉は黄化萎凋し、枯死します。
  • 生育が進むとりん茎部、根頭部、葉柄基部そして地表面に接した下葉などが汚白色で水浸状となり軟化して垂れ下がります。
  • 病徴が進むと葉柄が離脱したり、肥大根部が軟化腐敗したり、空洞化を起こします。
  • 被害部分は悪臭を放ちます。これが本病の病徴と極めて良く似ている腐敗病との決定的な違いです。
  • 湿度が高い入れ物に入れておいても、かびによる病気のようにかびが生えてくることはありません。これも本病の特徴です。

生活様式
  • 軟腐病が常発する畑に宿主作物を植えると、その根圏(根の付近)で病原菌である軟腐病菌の増殖が起こります。
  • 根の無い土壌中では病原菌が活動し易い季節でも、その密度は非常に低く、これは根が病原菌の増殖の場を提供していることを裏付けております。
  • ハクサイを例に取ると、結球始めころから根あるいは地際部の葉柄に接触している土壌中で病原菌数が多くなります。
  • 病原菌数が多くなるとキスジノミハムシ、ヨトウムシなど食害昆虫の食害痕の傷口から病原菌が侵入して発病します。
  • また根の回りを中心に増殖した病原菌は、風雨の力を借りてハクサイ、レタス、ニラ、ネギ、チンゲンサイなど多くの宿主野菜の葉上、葉柄、根冠やりん茎に土砂と共に到達します。
  • 到達した病原菌は、害虫の食害痕の傷、風雨などで生じた傷、水孔、気孔などからも侵入し発病します。
  • この時期が高温と多湿であると発病と病徴の進行が助長されます。
  • そのため、夏の高温時期に播種や定植する栽培型では発病と被害が大きくなります。
  • 生育前期に降雨が多い年は発病が起こり易い傾向があります。
  • 台風や豪雨などは病原菌の分散を激しくし、発病も助長し、とくに低湿地では壊滅的な被害を受けます。
  • 頭上潅水やスプリンクラー潅水もまた発病や伝染の要因となります。
  • 以上をまとめると、越冬場所(土壌団粒・雑草根圏)→宿主到達(雨滴・昆虫・センチュウ・宿主根の伸長)→宿主根圏と葉上での増殖→宿主体侵入(傷口・気孔・水孔)→宿主体増殖→発病(軟腐腐敗・悪臭)が軟腐病の発生生態です。
防除のポイント
耕種的防除
  • 軟腐病の発生には作物依存度が非常に大きいので、連作は避けましょう。
  • 発病株は早期に抜き取り畑の外に搬出して焼却処分しましょう。
  • 畑は排水を良くし、雨水が停滞しないように心掛けましょう。
  • 雨の日の収穫は輸送中の腐敗の原因となるので避けましょう。
  • 根を洗って出荷する作物では、発病根が水洗槽に入ると水洗中に健全根に病原菌が感染し、市場腐敗の原因となるので注意しましょう。
  • 軟腐病菌は乾燥や直射日光に弱いので、日光に当てて乾燥し、10℃以下で貯蔵しましょう。
  • 結球野菜類では結球直前から、また株養成野菜では養成中の中耕などで根に傷を付けると発病が助長されるので根を傷めないようにしましょう。
  • 特に、降雨前の中耕は発病を高めるので注意しましょう。
薬剤的防除
  • アオムシ・ヨウトウムシなど食害昆虫の食害痕から感染・発病します。アオムシとヨウトウムシに登録のある主な農薬には、エルサン乳剤(PAP乳剤)、カスケード乳剤(フルフェノクスロン乳剤)、コテツフロアブル(クロルフェナピル水和剤)、スピノエース顆粒水和剤(スピノサド水和剤)、トレボン乳剤(エトフェンプロックス乳剤)、モスピラン粒剤(アセタミプリド粒剤)などがあります。対象作物に登録があるものを選んで害虫駆除を行いましょう。
  • キスジノミハムシの食害痕からも感染・発病します。キスジノミハムシを対象とした主な殺虫剤には、アニキ乳剤(レピメクチン乳剤)、エルサン乳剤(PAP乳剤)、ダイアジノン粒剤5(ダイアジノン粒剤)、モスピラン水溶剤(アセタミプリド水溶剤)などがあります。対象作物に登録があるものを選んで害虫駆除を行いましょう。
  • 軟腐病に対して登録のある主な殺菌剤には、オリゼメート粒剤(プロベナゾール粒剤)、カスミンボルドー(カスガマイシン・銅水和剤)、バイオキーパー(非病原性エルビニア・カロトボーラ水和剤)、バリダシン液剤5(バリダマイシン液剤)などがあります。対象作物に登録があるものを選んで、正しく予防散布しましょう。

データ作成2013/4/15

■ご注意

文中に記述のある農薬の登録内容は、すべて上記データ製作日時点のものです。ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。

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