メロンえそ斑点病
1959年に静岡県の温室メロンに発生し、その後北海道から沖縄まで全国で広く発生している温室メロンでは問題の病害である。本病は土壌伝染、種子伝染及び汁液伝染する厄介なウイルス病である。メロンのほか発病するものとしてスイカがある。スイカの果実に発症すると、被害果実の輪切り面での病徴が最近問題のスイカ果実汚斑細菌病やスイカ緑斑モザイク病の病徴によく似ている。
発生の生態
病原菌
- 病原体はウイルスで和名はメロンえそ斑点病(Melon necrotic spot virus 略称はMNSV)と言う。外国ではアメリカ、ヨーロッパなどで発生が認められている。
- ウイルス粒子の形態は30nmの球状で電子顕微鏡でないと確認できない。
- 宿主範囲は比較的狭く、ウリ科植物に限られるが、接種試験によるとササゲの初生葉にも寄生性が見られる。
- 本ウイルスにはわが国では二つの系統、即ち長崎系と静岡で発見された系統が報告されているが、長崎で発見された系統には全身感染し易いものがあると言う。
- スイカでは1989年に鳥取県のスイカで果実繊維部にえそを伴う異常果が見出され、MNSVと報告された。
- イギリスではスイカで自然発病が確認されている。
病徴
- 全生育期間を通じて、植物体各部に特徴的な症状があらわれる。
- 小型点型:主に土壌伝染の全身感染に伴って発生する。茎頂付近の葉に黄褐色の微細な斑点を生ずる。
- 大型斑型:主に管理作業に伴う汁液伝染によって発生する症状で、成葉の葉縁から葉脈に沿って黄色ないし褐色に枯れこむ。
- 鳥あし型:茎の地際部が鶏の脚状に褐変する。
- 茎えそ:茎に現れる不整形のえそ。
- 果実玉えそ:幼果に円形のえそ斑。
生活様式
- 本病原ウイルスは種子、土壌及び汁液(接触)で伝染する。
- メロンえそ斑点ウイルスの付着した、オルピディウム・ククルビタセラム(かびの種類)の遊走子が根に侵入することで病原ウイルスが感染する。
- 種子伝染の場合は、オルピディウム・ククルビタセラムが付着したメロン種子を播種すると伝染が起こる。所謂、媒介者依存型種子伝染である。
- 土壌伝染は本病の主な伝染経路で、発病土壌にメロンを播種したり、苗を定植したり、汚染土壌が付着した資材などを用いて栽培すると、根部でオルピディウム・ククルビタセラムの媒介により感染・発病が起こる。
- 病原ウイルスによる汚染土壌は10ヶ月近く伝染力を保っている。
- 汁液(接触)伝染は発病株のある圃場で、芽かき、誘引、施肥などの管理作業や畝間の歩行などで作業者が茎葉に接触したり汁液に触れて感染・発病する。
- 本病は土壌の過湿、土壌pHが高く、低温、日照不足などの条件では発病が助長される。
- 診断法としては、成葉の葉脈に褐色の樹枝状の大型病斑や幼葉に小斑点が認められればえそ斑点病と診断してよい。特に、大病斑は特徴があるために診断のきわめて有力な手段となる。
- 病葉をメロンの子葉に接種すると4~5日後に局部病斑を生ずる。
防除のポイント
- 基本的な防除法としては、本病は土壌中のオルピディウム菌の媒介で伝搬されるので、媒介者であるオルピディウム菌除去の対策を考える。
- 種子は健全株から採集し、汚染の恐れがあるときは予備乾燥後、70℃・72時間の乾熱処理を行う。
- 育苗土、本圃土壌は蒸気消毒を行う。
- 栽培資材は清浄なものを使用する。
- 発病圃場での連作は避ける。
- できる限り微酸性になるよう、不必要な石灰資材の施用を避けて、硫安、過石、硫加など、生理的酸性肥料を施用する。
- 農作業は露が乾いてから行い、接触伝染を防止する。
- 収穫後の被害残渣は乾燥させて焼却処分する。
- 汚染圃場からの雨水や用水の流入を防ぐ。
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