ピシウム病
ピシウム病を起こすピシウム属菌は、苗立枯病を起こすリゾクトニア属菌同様に多くの野菜類を侵します。
特にナス科野菜、ウリ科野菜、ホウレンソウ、ダイコン、エンドウ、ミツバ、葉根菜類などの発芽間もない芽や胚軸、根部を侵して発芽阻害、苗立枯病や腐敗病を起こします。
単独の病害として被害が問題となるものには、ショウガ・ミョウガの根茎腐敗病、サトイモ根腐病、ゴボウ根腐病、ホウレンソウ立枯病、インゲン綿腐病などがあります。
前者の被害は苗立枯病(Damping off)、後者の被害は腐敗病(Root rot、Soft rot)で代表されます。
発生の生態
病原菌
病原菌はかびで、わが国ではおよそ30種類の種が記載されておりますが、その多くは多犯性で多くの野菜類を侵します。近年、水田転換畑でピシウム属菌による被害が多くみられます。その原因は、ピシウム属菌は土壌中ばかりでなく、水中や一部の海水中にも広く分布し、灌漑水や灌水中でも生存や増殖できることによるものです。
病徴
- 病徴は苗立枯れで代表される苗立枯病、根腐病と腐敗病です。
- 苗立枯病は土中でのピシウム属菌の密度が高く、活動が盛んなときには種子が土壌中でやられてしまう発芽前立枯れ(pre-emergence damping off)と双葉期の小苗の地際部が暗緑色水浸状に軟腐し、細くくびれて腰折れとなる発芽後立枯れ(post-emergence damping off)の2種類です。
- ウリ科、ナス科、アブラナ科の野菜類やホウレンソウなどで問題となります。
- 根腐れ、腐敗を起こすものとしてはミョウガ・ショウガ、ミツバ、ホウレンソウ、アブラナ科の野菜類、ダイコン、イチゴ果実などが栽培中のほかに市場病害としても問題となります。
生活様式
- ピシウム属菌には菌糸、遊走子のう、遊走子、分生胞子、卵胞子の繁殖期間があり、卵胞子が土壌中での耐久体で長期生存に耐えることができます。
- ピシウム病の発生は低湿地や多湿な条件下で、発病適温は20~30℃です。そのため、梅雨期や9月ごろに被害が現れやすいものです。
- ピシウム属菌の活動する土層は酸素の多い表層です。そのため表層ほど病原菌の密度が高く、発芽前および発芽後の小苗が被害を受けます。
- ピシウム属菌は土壌中の未熟有機物をえさにして速やかに菌糸を伸長させたり、遊走子のうや遊走子をつくる能力が強く、土壌生息型の病原菌です。
- 土壌中に生息しているかびの中では、一番早く未分解有機物に着生します。そのため青刈りした作物や緑肥のようにC/N比の低い未熟有機物を施すと思わぬ被害を受けます。
防除のポイント
耕種的防除
- 苗床や鉢用の土壌は、新しい水田土壌を使用しましょう。
- 汚染の心配がある土壌は必ず土壌消毒を行いましょう。
- 多湿を避けるために露地栽培では高畝にしたり、透水性や排水性を良くして、雨水が停滞しないよう心掛けましょう。
- 育苗床での灌水は午前中に行い、夕方以降には土の表面が乾いているような水管理を行いましょう。
- 苗床は蒸し込まないよう温度管理にも注意しましょう。
- 鉢上げ用の土壌や直播する畑土壌にはC/N率の低い有機物や未熟有機物の施用は極力避けましょう。
- 育苗床の連続使用は控えましょう。もし使用するときは必ず土壌消毒を行いましょう。
薬剤的防除
- 病原菌に汚染されている圃場や連作地は必ず土壌消毒しましょう。
- ピシウム病に対して登録のある農薬は、プレビクールN液剤(プロパモカルブ塩酸塩液剤)、タチガレン液剤(ヒドロキシイソキサゾール液剤)、タネサンGT(ダイアジノン・チウラム粉剤)、リドミル水和剤(メタラキシル水和剤)など多くの種類があります。
データ作成2013/4/15
■ご注意
文中に記述のある農薬の登録内容は、すべて上記データ製作日時点のものです。ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。
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