トマト青枯病
発生の生態
発生の原因
- この病気を起こす病原は土壌中に生息する細菌です。
- この細菌は以前Pseudomonas solanacearum(プシウドモナス・ソラナセアラム)という名前でしたが、近年Ralstonia solanacearum(ラルストニア・ソラナセアラム)という名前に変わりました。
- この細菌はトマトの他にナス、トウガラシ、ピーマン、ジャガイモ、タバコ、などナス科や、インゲン、ソラマメ、イチゴ、ダイコン等33科200種以上の作物を侵す多犯性の典型的な土壌伝染性の細菌病です。
- 菌群・レース・生理的性質を異にする多くの系統があります。
病徴
- 日中萎れ、曇りの日や夜間には一時的に回復しますが、病勢の進展が早く、やがて回復しなくなり緑色のまま枯死します。
- 発病後期の株では地際部付近の茎の維管束の褐変、細根の褐変・腐敗がみられます。
- 感染株の茎や根の維管束で増殖し、道管の中で菌が増殖して道管が詰まると水分を吸収できなくなり急に青枯れ的に萎凋し、やがて枯死します。
- 外観的には茎や葉に病徴らしきものは見られませんが、地際部近くの茎の表面にイボのような気中根の発生がみられます。
- 被害株の株元付近の茎を切ると中から乳白色の細菌汁液が出てくるのが特徴です。
伝染方法
- この病気は土壌伝染します。
- 細菌は塩類障害、害虫の食害痕、農作業などによる根の付傷部分から侵入します。
- 被害株の根・茎・葉とともに土壌中で2~3年以上生存します。
- 湿った土壌中で長期間生き残るといわれていますが、乾燥した土壌中では短い間しか生存できません。
- 2次伝染は細菌が根の接触により起こる方法や、第1次感染株の根から放出された細菌が、水により移動して周囲の株に移る方法などがあります。
- 発病株の剪定などに使用して細菌汁液の付いた刃物で健全株を切ると、細菌は地上部の切断付傷部分から感染します(2次伝染)。
- 農機具に付いた汚染土壌、降雨や出水による水の移動で無発病地にも移ります。
発生条件
- 全国各地に発生しますが、特に暖地では被害が大きくなります。
- 青枯病菌は10℃~40℃で生育しますが、生育適温は25~37℃、発病適温は25~30℃です。
- 地温が20℃を超えると発生し始めます。
- 砂土~粘質土、排水不良地で多発しますが火山灰土では比較的少ないです。
- 連作、多肥栽培、未熟有機物の多量施用により発病が助長されます。
- 露地では6~7月に発生し、盛夏にかけて多発します。
- 抑制栽培では苗床から発生することが多く、8~9月に多発します。
- 促成栽培では7~8月の苗床で感染し、苗によって本圃やハウスに持ち込む例も多くみられます。
- 土壌線虫の加害で発病が助長されます。
防除のポイント
耕種的防除
- 連作による菌密度の上昇を防ぎましょう。
- 宿主とならない作物を輪作しましょう。
- 発病株は周囲への伝染源となるので見つけ次第抜き取りましょう。
- 被害作物を圃場に鋤き込まずに、焼却処分しましょう。
- 育苗土は必ず土壌消毒しましょう。
- 多湿にならないように圃場の排水をよくしましょう。
- 地温の上昇を防ぐために敷きわらをしましょう。
- 抵抗性台木に接ぎ木栽培するか、抵抗性品種を利用しましょう。
- 汚染している圃場で使用した農機具はよく洗浄・消毒しましょう。
- 剪定に使用した刃物は1株ごとに消毒しましょう。
- ネコブセンチュウの発生を防ぎましょう。
薬剤的防除
- 最新の登録農薬を確認し、使用法に従い正しく使用しましょう
このページに掲載のイラスト・写真・文章の無断の転載を禁じます。
全ての著作権は株式会社武蔵野種苗園に帰属します。