種苗事業部 産地と栽培情報

2015年

武蔵野交配「改良千黒」を栽培して

奇形果の発生が少なく、 食味の優れるナス

JAいせはら
営農経済部営農課 農産園芸係
加藤 稔

地域の概要

伊勢原市は神奈川県のほぼ中央に位置する人口約10万人の都市です。東京から50km、横浜から45kmに位置しており、首都圏からの近郊都市として重要な役割を果たしています。総面積55.52km2のうち山林原野が約1/3を占めており、丹沢大山国定公園の一角に位置する大山を頂点として東に平野部が広がり、鈴川、善波川、日向川、歌川が流れています。
伊勢原市の気候は曇天が多く日照時間が短いという特徴があります。その理由として北側に位置する丹沢山系があり、丹沢山系の大山に南風がぶつかることにより、雲がたまりやすくなっています。また、この丹沢山系に守られていることにより、雪が降っても積もらないのも特徴です。
伊勢原市では、果樹を中心に野菜、水稲、酪農、養鶏とさまざまな農業生産が行われており、農協の直売所をはじめ、果樹のもぎとり、個人での販売所、スーパーへの販売、全農への共販出荷と複数の販路を活用して消費者へと届けられております。


産地の概要

 JAいせはら野菜部会内の共販組合ではナスの共販出荷を20年以上行っております。
青果物はJA全農かながわを通して量販店へ出荷しております。量販店とは長年のお付き合いをさせていただいており、出荷開始前には全農担当者を招いての事前会議を開催し、出荷の規格、納品、年度の情勢、消費者の野菜に対しての反応などの情報交換をしています。共販ナスに関しては消費者と生産者に直接の接点がないため、情報交換を行うことによって、消費者ニーズを把握することができ、求められているナスを出荷していくことができます。このような情報を元に当産地では規格・品質に関して厳しく判断を行っております。

「改良千黒」の試験栽培から導入決定まで

 当産地では昨年より(株)武蔵野種苗園の「改良千黒」の栽培を行っております。
昨年までは「千黒二号」を中心とした生産・出荷を行っておりましたが、時々奇形果が発生してしまうことがありました。そこで武蔵野種苗園の担当者に相談したところ「改良千黒」を紹介して頂き、試験栽培を始めるに至りました。
「改良千黒」の栽培初年度は、ナス苗生産農家に栽培の依頼をしました。栽培の方法は各農家「千黒二号」と同じようにし、比較を行って頂きました。
比較栽培の結果は、これまでと同様の栽培方法を行っても問題なく栽培することができるということでした。危惧されていた奇形果の発生もなく、「改良千黒」の有用性が認められ2年目も栽培することに決まりました。
「改良千黒」は「千黒二号」と同じ系統なので、市場への出荷は問題なく行えております。
「改良千黒」の初年度栽培面積は市内共販ナス生産面積の1/10ほどでしたが、2年目には栽培面積の大部分を「改良千黒」に変更しました。
従来の管理方法でも生育~収穫まで問題なく栽培可能なため、これまで「千黒二号」を栽培していた生産者でもすぐに切り替えることができる上、奇形果の発生を抑えることができるので収量の増加も望めると思われます。


今後

 これまで、「千黒二号」の栽培を行ってきたのは、量販店より「“千黒二号”ナスは食味が良いのでもっと出荷して欲しい」と要望があったためです。出荷している量販店では好評を頂いておりますが、他の量販店等ではあまり見かけることがありません。
「千黒二号」の食味のよさは「改良千黒」にも同様に現れております。
今後は、生産量の増加と出荷先の増加を目標とし、多くの方に「改良千黒」の名前と味を知っていただきたいと思います。

 

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