種苗事業部 産地と栽培情報

2011年

武蔵野交配「里きらり」コマツナを栽培して

葉色が濃く、葉のつや、照りが強く、夏場の生育がゆっくりしているコマツナ

東京都江戸川区 生産者 浅岡 博行

産地の概要

江戸川区は東京都の東の端に位置し、千葉県との県境に流れる江戸川から運ばれた肥沃な土壌により、昔から農業の盛んな地域です。ここの特産物といえばコマツナがあまりにも有名です。「小松菜」という名前の発祥地でもあります。
最近は直売の生産者が増えてきましたが、コマツナ専作農家も多く、140戸がコマツナを生産しています。都民の台所としてどこの産地よりもより鮮度の高いコマツナが出荷できる最大のメリットを持っています。

東京都江戸川区
生産者 浅岡 博行

潅水を控えめにした水分管理だったので、ややカッピングがみられた

株の太りがよいので、1束当りの本数が少なくても済み作業性がよい。荷姿もきれい

コマツナ専作

私がコマツナの生産を始めたのは昭和55年からなのでちょうど30年ほどになります。ハウス面積は2,800㎡で生産緑地にしています。ハウス周年生産で年間6回転、品種は3~4品種を季節によって使い分けています。労力は両親と私の3人です。
出荷先は市川市の地方市場で、出荷姿は400gのテープ結束、FG袋は使っていません。1日平均250~300束を出荷しています。

品種の選定条件

コマツナの品種選定では、株張りがよく束数の出る品種、テープ結束で見栄えのよい品種、ひげ根が少なく土の付きにくい品種など、収量性と作業性を重視しています。
萎黄病に耐病性のある品種が出てきてから夏場の生産ができるようになりましたが、耐病性品種は総じてひげ根が多く、土壌が湿っていると土が落ちにくく作業性が悪くなるのが難点です。萎黄病耐病性でも細根の少ない品種があるといいです。
また、春~秋作の品種では生育日数を明記してもらいたい。毎日、継続して収穫していくためには、収穫日から逆算して播種を行うので、季節ごとの生育日数がわかると使いやすいです。新品種ではとくに生育日数が明記してあると試作しやすいと思います。

「 里きらり」を試作して

「里きらり」は昨年、初めて作ってみました。種子の届くのが遅かったので、8月12日から9月10日まで播種しました。条間11cm、株間6cm、1粒播きです。
「里きらり」のよかった点は、
①葉色が濃く、葉のつや、照りが非常に強い。
②株張りがよく葉柄の太りがよいので、1束作るのに本数が少なくて済む。
③細根が少ないので、土の付きが少なく落とすのが楽で作業性がよい。
④夏場でも生育はじっくりで伸びが遅いので、何日で収穫できるか生育
日数をつかめれば使いやすい。
以上、「里きらり」は特色のある品種です。もう少し伸びがあってもいいのかなと思いますが、使える品種ではないでしょうか。今年は播種期の幅と生育日数を把握できるよう春作から播種をしていきたいと思っています。

細根が少なく土が落としやすいので、収穫作業がしやすい