種苗事業部 産地と栽培情報

2017年

【群馬県伊勢崎市】武蔵野交配「里きらり」コマツナを導入して

盛夏期でも計画的な播種・収穫計画が可能!

群馬県伊勢崎市
株式会社 国太郎
社長 宮田 裕行

地域の概要

 伊勢崎市は関東平野の北西の城山麓の南面に位置し、北部に一部丘陵地があるほか、南部には利根川が流れています。冬季は「上州のからっ風」と呼ばれる寒風が吹きます。土地は火山灰地で水はけがよく、桑の成長に適していたため古くから養蚕が盛んであり、江戸時代には太織の産地として知られていました。

経営の概要

古くから養蚕の盛んであった伊勢崎市で私の家は代々米麦・養蚕農家として生活してまいりました。野菜(野菜農家)への転換は今から40年程前のことです。
当時は大量にあった桑畑の開墾とその畑の再利用に苦心したと祖父母から聞かされております。野菜栽培のスタートは露地栽培でのニラ・ホウレンソウ・シュンギク・インゲン等の栽培でした。栽培施設を全く持たない露地栽培での農業経営は自然災害の影響を大きく受ける大変厳しいものだったそうです。そんな中で経営の安定化と雇用の安定化を図るため、私の両親の代から施設でのコマツナの周年栽培に取り組み始めました。今から約20年前には当地域で特別栽培によるコマツナをブランド野菜(「こまっちゃん」というブランド名)として出荷するまでになりました。その後、平成21年にはJA職員であった父の定年退職を機に、当時大学の研究室にいた私も加わって現在の農業生産法人・株式会社「国太郎」を設立しました。会社名の「国太郎」とは戦前・戦中・戦後と激動の時代の中、先祖代々の土地と家業を守り抜いた私の曽祖父の名前を頂いたものです。
現在、株式会社「国太郎」では特別栽培を継承しつつ、さらに堆肥中心によるコマツナの有機栽培に取り組んでおります。従業員は両親と私のほか、社員とシフト制のパートさん三十数名で、作付面積はハウス栽培で3ha、露地栽培で2haを有し周年栽培を行っております。平成26年の大雪の被害でハウスなどが被害を受けましたが、現在は復旧が済んでおります。

※特別栽培(「国太郎」農法)について
一般的な化成肥料や農薬の大量投入による栽培方法ではなく、減農薬(「国太郎」では、1作の間に農薬の散布は一度だけ)、堆肥中心の有機栽培(化成肥料は一切使用しない、堆肥と有機系肥料による栽培)のこと。

栽培の概要

 「里きらり」は2月下旬から10月下旬頃までのハウス作で播種をしており、この期間中は他の品種は一切使用しておりません。㈱武蔵野種苗園の推奨している「里きらり」の播種時期からは若干外れますが、創意工夫の末問題を解決し今のような播種時期に落ち着いています。管理としては夏場の栽培のため灌水管理に特に気を使っており、播種から発芽まではしっかりとした灌水を行い発芽の揃いを良くします。その後も収穫の一週間前までは、週一回程度の灌水を行っております。
特別栽培の方法を現在も続けており、堆肥中心の有機栽培に取り組んでおります。
特別栽培のため、使用する堆肥にもこだわりがあり、市内の有機栽培にこだわる米農家から出る籾殻を繁殖和牛農家に依頼し、子牛の糞尿と混ぜて数年発酵させてもらったものを使用しております。また、連作障害対策として、収穫には鎌などを使用せずに手収穫で根ごと収穫し、葉や茎の残渣もすべてハウス外に持ち出して片づけています。土壌消毒も年間の栽培スケジュールの中に組み込むことで、ハウス内の温度が上がる時期にすべてのハウスの消毒が完了するように努力しております。
通常、「国太郎」では1ハウスで平均年8~9作は播種を行います。そのために収穫から播種までを1日で完了するようにしています。作業に遅れが出ないように連絡を取り合いながら連携して作業を行っています。午前中は収穫作業、午後は播種作業を行っており、基本的に男性のパートさんが収穫や圃場の整備などを行い、女性のパートさんが出荷作業を担当しております。
また、パートさんから定期的に聞き取りなどを行い、雇用体系も長く続けてもらえるような魅力的なものとなるよう心がけています。例えばパートさんは土曜・日曜が定休日の完全週休二日制を実施しております。
出荷先は、JA佐波伊勢崎との完全契約栽培で日量200~300ケース程になります。西は大阪府、北は秋田県まで出荷しております。そのためFG袋と出荷箱にはJA佐波伊勢崎の名前が入っております。現在のコマツナ専業になってから一度も出荷を切らせたことはありません。

導入までの経緯と栽培をして

 「里きらり」を知るきっかけは㈱武蔵野種苗園の担当者からの紹介でした。温度の上がる夏場に株張りが良く、かつ伸び過ぎて収穫に追い立てられない品種を探していた私にとって、「里きらり」は非常に優秀な品種ではないかと考えています。播種から収穫までの日数がしっかりと計算することができ、計画的に播種を行う生産者には打って付けの品種ではないでしょうか。「国太郎」では「里きらり」を導入してから、パートさんの作業効率なども一層安定したのではないかと感じています。

 

今後望むこと

 栽培を行う中で非常に優秀である「里きらり」ですが、唯一の欠点を挙げるならば食味ではないでしょうか。

 

最後に

「国太郎」では農業に興味のある方の受け入れを積極的に行っていく予定です。今回記事を読み、この業界に興味をお持ちなった方がいらっしゃいましたら是非お問い合わせをください。よろしくお願いします。

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