種苗事業部 産地と栽培情報

2012年

武蔵野交配「里きらり」を栽培して

株揃いよく、ボリュームがあり、夏場に収量の多いコマツナ

栃木県宇都宮市
生産者 箕輪 幸夫

コマツナ栽培歴25年

私の住む宇都宮市は栃木県の中南部に位置しています。農業生産はコメを中心にトマト、ナシ、洋ランなどが全国上位に位置付けられています。近年では「餃子の街」として有名になり、観光客が増加してきています。
私のコマツナ栽培歴はコメの1割減反が始まったころからなので、かれこれ25年になります。宇都宮市はホウレンソウの生産は多いのですが、ホウレンソウは周年生産が困難なのでコマツナで周年生産をしたかったんです。栽培当初のころはコマツナの知名度が低く値が出なかったのですが、東京から移り住んでくる人が増えてきたことや健康食の価値観が認められ、需要が伸びてきました。平成18年、稲作用の作業機械を処分し、10ha作付けのあったコメをやめてコマツナ専作になりました。

 

コマツナの栽培概要

 ハウスは周年生産で、年間5作ほど行います。メインとなる施設栽培の作付面積は1.8ha、3aのパイプハウスが35棟あります。露地栽培は5haで秋、冬作のトンネル栽培が中心となります。
労力は、私たち夫婦とパートさん3人で、宇都宮市場(学校給食)に個人出荷しています。出荷形態は根切り収穫で、FG袋に200g詰め、段ボール箱に30袋入り、6kgです。
ハウス栽培は何作も作っているため、土壌管理が重要になってきます。もみがら堆肥、トーマス菌を使った海藻原肥、米ぬかなど微生物入り有機肥料が中心になっています。化成肥料は極少量で、その量は3aで毎作10kgほどで、土壌分析は年1回行っています。
コマツナの品種は3品種ほどを季節によって使い分けています。今まで夏場の品種はボリュームのある品種が少なく、物足りなさを感じており、重量の出る品種を探していたところ「里きらり」に出会いました。

「里きらり」は満足のいく品種

 「里きらり」との出会いは昨年の秋、㈱武蔵野種苗園の農場見学会で、そのとき、「里きらり」を見て、早速作ってみたいと思い、今年の4月21日から3日おきに3回播種して、試験栽培をしました。自動播種機で条間15cmで播種しましたが、「里きらり」はこれまで使っていた品種より種子の粒が大きかったので、若干、株間が広くなり横に広がった草姿になってしまいました。そこで、粒数を多く落とすようにしたところ、立性ですばらしい草姿に仕上がりました。試作の段階で「里きらり」の特性をつかめたことは幸いでした。
その後、8月末播種まで「里きらり」を使いましたが、充分満足のいく品種で、夏作は「里きらり」に決めました。
夏場の栽培のポイントとしては、播種前の充分な潅水にあります。私はハウスのサイドに設置した潅水チューブから1時間ほど潅水し、2~3日してから播種します。生育途中の潅水は1~2回の葉水で調整しています。「里きらり」は伸びはゆっくりですが、根が充分張っているので、ハウスの隅々まで均一に生育しています。株揃いは非常によいです。


「里きらり」のよい点は

● 発芽揃いがよく、一斉発芽する。
● 根張りがよく、株揃いが非常によい。
● ハウスの端から端まで均一に生育が揃い、くずがでない。
● 生育期間は夏場でも30日ほどで、伸びすぎないので取り遅れがない。
● 1株重が重く、FG袋に5~6株で200gになり、理想的な姿といえる。
● 地際部がきれいでしっかりしているので、収穫時、カッターで切りやすい。
● 立性で収穫作業、調製作業がしやすい。パートの人にも評価が高い。
● ボリュームがあり、収量が多く、反収が上がる。
● 葉色が濃く、てりとつやがあり、見栄えが非常によい。
このように「里きらり」は特色のある品種で、春~夏にかけてはこの品種だと思いました。来年は4月の上旬から播種していきたいと思っています。

 

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