種苗事業部 産地と栽培情報

2014年

武蔵野交配「碧寿カブ」を栽培して

季節を通じて小カブと向き合う

千葉県
JAちば東葛 柏地区経済センター
副センター長 長妻 英樹

歴史と愛情の詰まった「柏の小かぶ」

 柏市は、千葉県北西部に位置する人口約40万人の市です。都心から北東約30kmに位置し、道路・鉄道の整備が進み、交通の便が良いところですが、北部には利根川が流れ、東部には手賀沼が広がり、野菜・水稲・果樹を中心に農業生産が盛んです。サッカーの柏レイソルのホームタウンとしても有名です。
 柏市の小カブの歴史は大正時代にさかのぼり、東京下町の漬物需要を満たすために、開墾地であった柏市豊四季地区の換金作物として定着したと伝えられています。それから現在に至るまで、栽培技術の研究や品種の選定を重ねた結果、周年栽培が可能となり、栽培面積は約230ha(JAちば東葛管内では約160ha)と生産量全国1位を誇っています。
夜明け前から収穫作業を行い、自宅作業場に持ち帰り、昼ごろまでに結束・洗浄を行います。そのあと箱詰めをし、午後3時ごろに農協へ持ち込み、検査を受けます。そして、夜8時ごろまでには市場に並び、全国のスーパー、八百屋さんに届くため、鮮度は抜群です。出荷のピークは春の4月~6月、秋の10月~12月の2回あります。肌は白く、しっとりと緻密な肉質、ほのかな甘さが特徴です。


後継者に恵まれた地域だからやるべきこと

 柏市は、都市住民や市場の需要に即して新鮮な農産物を供給しています。しかし、近年は急速な都市化に伴い農地は減少・細分化傾向にあります。このまま事態を放置すれば、相続等が発生するたびに農地が減少し、生産基盤である農地そのものがなくなってしまうという強い危機感を抱いています。
しかし、柏市は他産地に比べて知識と情熱を持った若い後継者が多いといった点で恵まれています。出荷時は、生産者が自分で収穫物を集荷場に持ち込みますが、そこでの待ち時間が生産者同士の情報交換の場となっており、若い後継者でも一人前になるのが早いです。そこで、彼らが今後も安心して農業を続けていけるよう、小カブの知名度アップや都市農業への理解促進に向けた定期的な活動も行われています。本年度は、青果物輸送車にキャラクターシールを貼り、さらなるPR活動に努めています。
厳しい環境の中、悩みは尽きませんが、柏の小カブ農家が志高く仕事に取り組んでいることは確かです。変化の時期を迎えた今、「これからも柏で小カブ栽培を続けていきたい」という揺るぎない想いを胸に、一致団結して今後も活動に取り組んで行きます。





平成24年度柏小かぶ研究会 品種審査会結果


 柏市は全国一の小カブ産地で、中でもほぼ周年栽培を行っている柏小かぶ研究会員は、その核となっています。現在は60名が所属しており、安定した生産量を確保するため、季節ごとに品種比較展示圃を設置し、現地検討会を実施しています。品種を選定する際は、結束作業の点から、葉軸のしっかりしたものや出荷時にクビ周り(葉の付け根の部分)のきれいなもの、葉が長すぎないなどの特性が望まれています。加えて食味の良さも重視しています。
平成24年度に開催された夏の品種比較検討会では4社5品種、秋冬の検討会では6社8品種が出品されました。当日は各種苗会社も参加し、実際に研究会員が立毛の状態から収穫物、食味までを評価しました。その結果、両時期ともに「碧寿」が最高得点を獲得しました。「碧寿」は、夏どりに最適な早生種とされていますが、当地域ではそれ以外の時期でも高品質で安定した生産が可能ではないかと考えています。また、現在も栽培は継続しており、「碧寿」は、①他品種に比べて肥大が早く、収穫までの日数が短い、②玉が白くて丸い、といった特徴を持つことが明らかとなりました。

「碧寿」を栽培して

 耕地面積は約1.5haで、うちハウスは15aです。労力は、家族2人とパートさんです。出荷はほぼ1年中行っており、日量約1,200束となっています。
小カブは冷涼な気候を好むので、秋期が栽培に最も適し、夏期は高温や乾燥、冬期は低温が栽培を難しくしていました。そこで、品種の特性や栽培方法などについて試行錯誤を重ねた結果、我が家では、2月、3月、6月上旬、10月、11月に「碧寿」を出荷しています。
2月、3月出荷分は、ハウスで栽培しており、温度は低めに管理しています。昨年度は、陶器のような光沢のある玉ができ、市場から高評価のFAXをいただきました。また、10月、11月出荷分も、葉が濃緑で玉が白く、クビ周りの良いものが収穫できました。
栽培上の注意点としては、春先はひげ根が出やすいこと、玉が扁平になること、が挙げられます。また、当地域では、土壌が痩せているため肥料がやや多めに必要です。
今後は、現地の主力品種も含め、その善し悪しだけでなく、栽植密度や施肥、病害虫防除を含めた検討を行い、栽培に活かされることを期待しています。


小林幸三郎氏


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