種苗事業部 産地と栽培情報

2012年

武蔵野交配「春賞味」を栽培して

形状がよく、FG袋の収まりが非常によいチンゲンサイ

埼玉県狭山市
生産者 栗原 義保

地域の概要

狭山茶で有名な狭山市は埼玉県の南西部に位置し、西武鉄道の新宿線、池袋線が通り交通の便がよいことから、高度経済成長期には東京近郊のベッドタウンとして人口が急増しました。
農業は減少傾向にありますが、市内奥富地区は田畑が多く見られ、隣接する川越市、所沢市などと同じJAいるま野管内にあってサトイモ、ゴボウ、ニンジンなどの露地野菜の生産が行われています。

 

チンゲンサイ栽培の経緯

私がチンゲンサイを作り始めたのは今から15~16年前になります。それまではトマトをメインに40年ほど栽培してきました。㈱武蔵野種苗園とは大変長い付き合いで、「宝冠2号」「宝冠NFR」「セレナーデ」などを作り、農場の元関口場長にはお世話になりました。トマトは収穫物を20kgコンテナで持ち運びをするので、妻への負担が大きくなってきたことから、トマトより軽量な作物はないかということでチンゲンサイを始めました。
スタート時の品種はこれも関口場長の勧めで「夏賞味」「冬賞味」を作りました。

「春賞味」の導入経緯

 現在はチンゲンサイを主力にトマトを若干、栽培しています。栽培施設は10連棟ハウスと9連棟ハウスで計4,620㎡です。労力は私ども夫婦とパートさん3名です。
チンゲンサイは年間6回転、3品種を季節ごとに使い分けています。「春賞味」は昨年試作して大変よかったので、使うことにしました。それまで使っていた品種は尻部が大きすぎて機械でFG袋に入れづらかったんです。「春賞味」は立性で形状がひじょうによく、色が濃く、FG袋にちょうどよく収まるサイズです。大きすぎず、小さすぎずといったところです。
「春賞味」の作期は春作は3月20日から4月末までの播種で、収穫は5月中旬から6月末、夏秋作は8月8日ごろから9月20日ごろまでの播種で、収穫は10月8日ごろから11月末までです。春と名前が付いていますが、夏秋作でも非常によい品物ができます。


「春賞味」の栽培概要

  夏秋作では、8月8日から播種が始まりました。299穴のプラグトレイに真空播種機で生種子を1粒播きにします。育苗期間は約20日で、夏用の育苗培土を使用します。定植時に子葉の色が若干、落ちるぐらいがいいようです。
栽植密度は1うね7条植えで、条間、株間はそれぞれ15cm。連棟ハウスの1棟分に4本うね立てして、1回の定植で2棟分(8うね)を植えます。
収穫は1週間で2うね分をとり終えます。FG袋に2株入りで300g、段ボール箱に10袋入れ重量3kgで、管内のJAいるま野へ出荷しています。出荷量は季節によって異なりますが、多い日で330箱、少ない日で200箱ぐらいです。
施肥量はオール8を10a当り100kgほど、前作にトマトが入っているところはNK化成で100kgほどです。堆肥は春先から夏にかけて土壌菌が異常繁殖するので、ここ6年ほどは入れていません。春から夏にかけては施肥の影響が大きいので量の調節がむずかしいところです。土壌水分が均一でないと生育差が生じ草丈に段差ができてしまいます。
夏場の7~9月の2ヵ月間はチンゲンサイが作りづらいので栽培は休み、石灰窒素で土壌消毒をしています。雑草が減る効果もあります。最近はハスモンヨトウの食害など害虫被害が多くなり悩まされています。栽培環境は厳しくなってきていますが、よりよいものを生産するよう努めていきたいと思います。

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