種苗事業部 産地と栽培情報

2018年

【高知県土佐香美地域】ニラ栽培への取り組み及びハイパーグリーンベルトについて

高知県 土佐香美農業協同組合
営農総合センター
営農経営指導課営農指導担当
宮本 剛人

 

 

地域概要


 

JA土佐香美は高知県中央東部に位置し、香美市・香南市の2市で構成される緑に囲まれた自然豊かなところです。

主な特産品は生産量日本一を誇るニラや物部のゆず、全国的にも知名度の高いやっこねぎや山北みかんなど、高知県下でも有数な園芸地域です。

 

産地概要


 

高知県のニラ出荷量は全国1位で、全体の約27%です(平成27年農林水産省統計より)。JA土佐香美ニラ部会の出荷量は県の半数を占めており、平成27園芸年度(平成26年9月~翌8月)で5,200㌧を超えています。

ニラ栽培の歴史は古く、昭和33年旧香美群野市町(現香南市野市町)において試作したのが始まりです。当時、稲作農家の所得向上のため、新しい品目を探していた野市農協は、この試作の成功を受けて、昭和36年に10名の生産者を選び種子の無料配布を行って本格的な栽培が始まりました。

平成6年のJA土佐香美発足以降、平成16年からは旧6町村の部会組織を一本化し、一つの部会として力を合わせて生産しています。また、管内のニラ栽培は平野部を中心に拡大してきましたが、平成25年には徳島県境に近い標高400mの香美市物部町神池でも栽培が始まっています。

現在、ニラ部会員は約210名、栽培面積は約94haとなり露地、施設栽培を組み合わせることによって周年出荷しています。

 

 

ニラ栽培への独自の取組やこだわり等


 

(1) 1年1作長期どり栽培

作型は、4月上中旬に定植を行い、7月中下旬から11月上旬まで収穫を行う露地栽培と、4月から8月まで定植時期をずらし収穫を行う施設栽培があります。

露地栽培であれば収穫回数3~4回、施設栽培は6~7回の収穫をしていきます。このように一年間で連続収穫をしていくことから、収量、品質低下を招かないよう一年で新たな株に更新していきます。また、定植時期から逆算して播種を行い、育苗機関を120~130日程度かけてしっかりした苗を作っています。

(2) 土づくり

本圃には、堆肥、有機物の施用はもちろんですが、保水性や透水性、また保肥力の改善につながる資材も積極的に施用し「土づくり」を行っています。

(3) こまめなかん水管理

マルチ下に点滴かん水チューブを設置することによって、収穫間際までこまめなかん水管理を行い、高品質高収量のニラを生産しています。

(4) 品質・鮮度保持

収穫したニラは、各生産者が箱詰めまで行います。遠隔地なので収穫したニラが量販店等に並ぶまで2~3日経過してしまいます。そのため傷みやすい葉を除去する調整作業にも細心の注意を払って行い結束します。

また、高知県が平成13年に開発した特許技術「パーシャルシール包装」も取り入れ鮮度保持に努めています。パーシャルシール包装の袋内は低酸素、高二酸化炭素状態になるためニラの故宮による消耗を抑制します。

このように、各市場や消費者に信頼されるニラ産地を目指して技術開発や栽培方法等の改善に取り組んでいます。

 

ハイパーグリーンベルトを栽培して


 

ハイパーグリーンベルトは、(株)武蔵野種苗園の担当者から紹介されたことをきっかけに、「管内作型への適応性」を検討するため、平成24年から栽培試験を始めました。

当時の印象は、草姿は立性で、草丈が長く、葉色が濃いということでした。分げつ数は少なく、その影響もあり収量は他の試験品種に比べてやや少ない傾向でした。

ハイパーグリーンベルトについては、3年間の試験を経て管内への導入に取り組みました。

現在、北部の山間部で徐々に導入が広がっています。栽培品種をハイパーグリーンベルトで統一する生産者や、ミラクルグリーンベルトで統一する生産者や、ミラクルグリーンベルトと組み合わせをすることによって厳冬期の数量アップを図る生産者も増えています。生産者からは、ハイパーグリーンベルトに期待しているとの声が多く、今後が楽しみです。

ハイパーグリーンベルトの特性である低温伸張性が優れているという強みを最大限発揮できるよう、作型や定植本数、肥培管理等も継続して検討していきたいと思います。

 

 

独自の取組やこだわり


 

高知県では県の基幹11品目を中心に環境制御技術に取り組んでいます。

管内市町村や県の補助事業を積極的に活用し、ニラにおいても環境制御技術の検討を行っています。収量面では一定の成果が見られるものの、品質面では葉先枯れ等の発生が見られ、その対策が今後の課題です。

現在、振興センター、JAが連携し現地調査等を行い、課題解決に向けて取り組んでいます。また、陶器の出荷量を確保するために、個々の作型の分析を行い提案する作型改善にも力をいれています。

最後に、ニラ栽培の課題は山ほどありますが、この課題を一つ一つ解決していくことで、「日本一のニラ産地 維持・発展」を目指します。