種苗事業部 産地と栽培情報

2021年

【香川県豊南地区】厳寒期の低温肥大・形状安定、耐病性も持ち合わせた「クラウドブレイク」を導入して

JA香川県豊南地区
営農センター 園芸課
藤村 厚介氏

JA香川県豊南地区レタス部会概要


品目:結球、サニー、グリーン、ロメイン

作付け面積:結球レタス280ha、非結球レタス83ha

部会員数:311名

播種時期:8月~2月まで

出荷時期:10月~5月まで

導入時期:定植時期10月28日~11月15日 収穫時期1月下旬~2月上旬

 

 

産地概要


豊南地区は、香川県の西南端に位置し、大野原町と豊浜町の2町からなります。南東は讃岐山脈を境に徳島県、愛媛県と接し、三方を山に囲まれているため災害が少なく、北西は瀬戸内海に面しているため温暖な気候となっています。

当地区での主な生産物は、レタス類を中心に青ネギ、ブロッコリー、タマネギ、ニンニクなどの葉茎菜類が多く生産され、特にレタスは「らりるれレタス」のブランド名で知られ、県内産レタスの約6割を豊南地区が占めています。

 

栽培の概要


当地区では外観、棚持ち、味の良いレタスを安定出荷するため優良堆きゅう肥と有機物を施用し、肥料においても有機率の高い「らりるれレタス専用肥料」を使用しています。また、香川県の主な出荷時期である12月~2月の厳冬期にはトンネルを被覆することで安定出荷を可能にしています。しかし、豊南地区はレタス栽培が始まって今年で61年になり様々な連作障害が発生し、ビックベインウイルスも発生が顕著になってきました。また、予想できない異常気象が毎年発生し、積み重ねてきた栽培技術だけでは対応できなくなり、品種選びも非常に難しくなりました。品種を選定するうえで重要となるのは①結球安定性(形状)、②ビックベインやべと病など防除が困難となる病気に対する耐病性、③低温肥大性となります。これらに重点を置き、安定出荷するために品種を選定しています。

導入の経緯


昨年度より、クラウドブレイクを豊南地区レタス部会栽培暦へ導入しており、結球安定性・耐病性・肥大性において適しており、特に肥大性と形状安定性においては優れていました。当地区では1月下旬~2月下旬の厳寒期で導入しています。

低温での肥大性


一番の決め手となったのは強い肥大性です。低温が続く1月~2月の厳寒期においても十分な肥大を示し、他の品種がMサイズで肥大が止まってしまうような環境でもL~2Lでの出荷が望めます。他の品種では温度の上昇する日中はトンネル被覆を開け、気温の下がる夜にはトンネルを閉め込み、頻繁に調整を行う必要があります。クラウドブレイクは低温肥大性が強いため基本的にトンネルを開け気味に管理しておき、極端な雨風や低温のタイミングのみ閉めこむ管理で栽培できるため、トンネルの開閉作業を簡素化することができます。また、肥大性が強いため他の品種の肥料設計より施肥量を削減できるのではないかと考えています。これについては試験段階ですが、圃場の肥沃度によっては基準量の1割~2割の肥料を減肥しても十分に肥大するのではないかと考えられます。

 

形状の安定性


二番目の決め手となったのは安定した形状です。豊南地区ではやや扁平気味で豊円形となり、店頭で手に取ってもらいやすい形状を目標としています。クラウドブレイクはやや扁平気味で切り口の部分が突き出ていない形状となりやすく、ダンボールやコンテナに詰めても箱の高さに綺麗に収まりやすい形状となります。肥大力が強いため気温や管理状態によって十分以上に大きくなる場合もありますが、縦長やタケノコ形の形状になりづらいのもポイントです。肥大力が強いため管理次第では想定どおりの収穫できない恐れもありますが、①定植適期、②施肥量、③トンネル管理、この3点を見極めることができれば、厳寒期においてこれほど頼もしく、安心できる品種はないと考えています。

ビックべイン・べと耐病性


豊南地区はレタス栽培が始まり61年目を迎えており、様々な連作障害、特にレタスビッグベインウイルスの発生が非常に多発しています。管内ほとんどの圃場で発生が見られ、特に厳寒期のレタスに低温ストレスのかかる時期の品種では耐病性が重要になってきます。当地区では化学的防除と丁寧な管理に加えて抵抗性品種を選定することで発生を抑えています。また、近年では比較的低温乾燥が続く厳寒期においても定期的な降雨や高温が続く年が増えており、厳寒期においてもべと病の発生が見られるようになりました。クラウドブレイクはべと病の発生がほぼ見られず、強い抵抗性をもっているため、罹病での歩留まり低下を軽減し、農薬コストも削減することができます。

 

今後の課題


近年では、レタスの販売単価が低迷し、農家の経営が非常に厳しい状況が続いています。そこで、農場では圃場の中での歩留りを上げていくことがますます重要になってきます。面積を拡大し、作付けを極端に増やすのではなく、従来の面積の中で植えたものは極力出荷することを意識することで圃場の中の歩留りを上げることが経営の安定につながると考えています。加えて農薬や肥料、品種についても使用の必要性や必要量について十分に理解し、適切な使用や過剰使用の削減が必要になります。私たち指導員の役割はこれら一つ一つの資材についてなぜ必要なのか、どの資材を用いてどのように管理を行えばよいのか説明を行い、農家の経営を助けることです。

これからも、レタス農家の生活を守ると共に、安心安全でおいしい「らりるれレタス」を消費者に届けるため尽力していきます。