種苗事業部 産地と栽培情報

2017年

【茨城県行方市】「冬大賞」チンゲンサイを栽培して

葉色濃く、作業性・低温伸長性に優れる

茨城県北浦みつば連合出荷組合
チンゲンサイ部長
岡部 弘

 

野菜の名産地、茨城県行方市から

新鮮なレポートをお届けします。

 

 

地域概要 豊富な出荷量を有する温暖な地域


 

私共の生産地域である行方市は茨城県の南東部に位置し、県庁所在地の水戸市から約40kmを軟化した場所で、東は北浦、西は霞ケ浦という二つの広い湖に挟まれ、東西の湖岸部は低地、内陸部は傾斜や起伏の多い行方大地といわれる丘陵地で、両湖岸部の低地では水田、果菜類、葉ショウガなどが栽培され、大地ではチンゲンサイやセリをはじめ、サツマイモ、エシャロット、ミズナなどの生産が盛んです。鹿島灘の黒潮の影響を受け、年間を通して比較的温暖な気候に恵まれた農業地域となっています。この地域で生産される農作物は数十品目に及び、中でもきりみつば、チンゲンサイの出荷量は全国で上位を誇り、大葉、セリについても全国でトップクラスの出荷量がある有数の産地となっています。

 

 

 

産地概要 自ら「EMそだち®」ブランドを展開


 

当茨城県北浦みつば連合出荷組合では、チンゲンサイを周年で出荷していて、年間約30万ケース出荷しています。そのうちEM活性液(Effective Microorganismsの略で有用な微生物群の意味)を使って栽培した青果物を「EMそだち®」(登録商標)ブランドとして、年間約13万ケース出荷しています。農薬の使用回数が少なくて済むことに加え、棚もちも良くなり、何より野菜がおいしくなることが一番の利点です。例えばチンゲンサイは苦みが少なくなり、葉ショウガやエシャレットは辛味が売り物ですが、マイルドな辛味になり、出荷先からも高評価を得ています。

組合員は約200名で構成され、品目ごとの生産部会は17部会あり、うちチンゲンサイ部会員は30名で構成されています。チンゲンサイは平成3年頃から始め、現在の作付面積は約20町歩です。

 

栽培概要 発芽もよく、収穫もしやすい品種


 

株間:15cm×15cm

(夏場は15cm×18cm 白黒マルチ使用)

播種:冬大賞 10月~2月  288穴トレーで播種、育苗。

収穫:冬大賞 11月~5月

出荷形態:草丈役20cmで収穫、2株260g~280gでFG袋詰めにし、京浜方面へ毎日出荷しています。

「冬大賞」は11月~5月までの出荷品種となりますが、発芽もよく、収穫もしやすいです。

冬季はダクトで暖を取り、最低4℃を保ちつつ、EM活性液+塩にがりを使用して、青果物の生育を促しています。出荷先は10社以上の市場と取引があり、高評価を頂いています。

 

 

 

導入の経緯 試験栽培結果から導入


 

「冬大賞」は試行番号(MSW-1082)の時に試験栽培をしていて、冬場の伸びや濃い葉色、軸と葉に艶もあっていい形に仕上がることに加え、揃いもよく、調整にも時間を取られないことから、「冬大賞」の導入を決めました。今年も順調に育ってくれて、出荷も良好でした。

 

 

栽培の感想 利点の多い品種と実感


 

葉先の枯れも少なく、収穫時の尻部のカットもしやすい品種です。極端な低温伸張性がない分、徒長もなく、節間も短く仕上がります。生育は水分量の加減によって調整ができることも利点のひとつでしょう。また、どちらかと言えばじっくり型となるので、形状も整い、収穫・調整の時間も短縮できることも、私にとっては作りやすい品種であるといえるでしょう。

 

 

 

今後の課題 様々な障害に強い品種を希望


 

(株)武蔵野種苗園のチンゲンサイのラインナップには、「白さび病」に強い品種は少ないので、ハウス内換気・薬剤散布などの管理が必要となり、その分の手間がかかるというのが気にかかります。是非とも、今後の課題としては、「白さび病」を含む病気に強い品種を期待します。また、「粋醐味」の副作用(夏収穫用)として、チップバーンに強く、耐暑性及び乾燥に強い品種を、併せて期待しています。

 

 

 

最後に 心強い武蔵野種苗園との協力関係


 

(株)武蔵野種苗園の研究育種農場が同県内(土浦市)にあるので、育種担当者や営業担当者が見に来てくれるのも心強いところです。品種の特性や疑問に思ったことを直接話し合える環境は大事かと思います。今後も試作品種等があれば協力し合い、それによって良い品種が生まれれば、私にとっても幸せです。

 

 

関連情報