種苗事業部 産地と栽培情報

2019年

【群馬県昭和村】使いやすさに太鼓判!「ディープサマー」ホウレンソウで安定出荷

群馬県 利根郡昭和村
奈良 浩

 

 

 

地域概要


 

群馬県の利根沼田地域は、農業の動向としては片品川左岸の赤城山北西麗でレタス・ホウレンソウ・トマト・ダイコン等の夏秋野菜やコンニャクを主体とした大規模な畑作経営が行われています。

その他の地域では観光資源に恵まれ、観光客も大勢訪れることから、リンゴを中心に、ブドウ・サクランボ・ブルーベリーなどの観光果樹経営や地域の気象条件を活かした多彩な農業経営が展開されています。

その中で群馬県昭和村は、利根郡の最南端にあって赤城北麗に位置し、東は沼田市利根町、北は片品川を隔てて沼田市に接し、南は渋川市赤城町に隣接しています。東西10.8km、南北9.8kmの扇状の形態で、面積は約64㎡あり、そのうち畑作地は約26㎡を占めます。標高は、260mから1,461mとなっており、500mから800m付近までゆるい傾斜をなし、いわゆる赤城高原地帯を形成しています。また、北東から流下する片品川は、北西から流下してくる利根川に合流し南西に流れています。

近は平均気温11.6度、最低気温は1月下旬から2月中旬にかけて-5度位まで下がります。また、7月下旬から8月上旬にかけて30度を示し、初雪は11月上旬から降ることがあります。晩霜は5月下旬まであり、根雪は約4ヵ月におよび4月下旬まで春雪を見ることがあります。耕土は平均30cm~50cmであり地域の大部分火山灰土の土質となっています。

 

経営概要


 

昭和村は日本有数の高原野菜の産地です。中でもこんにゃく芋の生産は日本一で、レタスやトマト、ホウレンソウを始めとした様々な品目の野菜の生産が盛んです。

私は昭和村の標高400~500m地点で、専業でホウレンソウ生産を行っています。露地栽培で2ha、雨よけハウス栽培で1.2haの耕地面積で生産を行っており、特に雨よけハウス栽培に関しては4月から12月にかけて播種時期をずらしながら各ハウス3回転を基準として生産しています。ハウスは1棟あたりの間口5.5m~

6m×長さ45~65mで、1日1~2棟分の収穫出荷作業を約10名で行っています。出荷規格は1ケースが200g×25袋で、都内に向けて出荷しています。

土づくりに関しては土壌診断の結果を基に行っています。

窒素成分8kgを基準として、ボカシ肥料などの有機質を利用しています。また土壌消毒や農薬散布も勿論重要ですが、石灰を加え塩基のバランスを調整する事により、べと病や萎凋病の発生を抑えています。

 

また、今年は異常気象により日中の気温が非常に高く危険なため、例年よりも作業時間を前倒しし朝4時半頃から収穫を開始するなどの工夫も行いました。

 

導入の経緯


 

元々、6月という時期は生産する品種に迷う時期でした。

抽苔やべと病、萎凋病などの病害の発生、生育速度による回転率とボリュームによる収量、そして収穫出荷における作業性などが問題となり、試験を繰り返す中でもなかなか気に入った品種が見つかりませんでした。そんな中、「ディープサマー」を紹介されて試験したところ、抽苔も病気の発生もし難く、生育は遅すぎずボリュームもあり、作業性も良好で評判が良かった事から、6月上旬から7月上旬まで播種する品種として導入しました。なお、7月上旬ごろからは「イーハセブン」を既に導入しています。

 

 

栽培しての感想 栽培のコツ、ポイント等


 

試作歯研から始めて3年目になりますが、ディープサマーはそれまでの管理方法から大きな変更を行わずに済みました。イーハセブン等のボリュームがあるある品種は初期から水分要求量が多い為灌水量を多くする必要がありましたが、ディープサマーはそのようなクセもなく慣行の栽培方法で生産が出来ました。今年は遮光率40%で生産を行っていますが、遮光率や遮光を行うタイミングなどによっては生育速度の速さと株張り、葉色などに影響が現れます。生育が早すぎる品種はボリュームが出ない中、ディープサマーは2~3日生育が遅いもののボリュームもあり良好でした。株の立性感も好印象ですが、軸折れや調整する葉が少ない事から、手間が少なく作業性が良いと評判です。

 

最後に


 

昭和村は比較的若手の生産者が多く、面積も生産者数も増加傾向があります。皆でまとまって生産振興を行っていく事が出来れば幸いです。今現在、ディープサマーを生産するにあたり課題や問題点などが見当たらない為、8月播種など他の時期での生産性を調べつつ様々な情報を集めながら、更に安定したホウレンソウの生産出荷を目指したいと思います。