種苗事業部 産地と栽培情報

2020年

【山形県真室川町】夏ニラの安定出荷を目指して「エナジーグリーンベルト」の導入を進める

JAおいしいもがみ
真室川営農センター
営農販売課 営農指導係長
佐藤 昌子

 

 

 

地域の概要


 

真室川町は、山形県北部に位置し、東西約30km、南北約25kmの広大な面積を有しています。北部の大部分は山林で秋田県南部に接し、西部は酒田市、東南部は金山町、鮭川村に隣接し、新庄盆地の最北部に位置しています。周辺の山岳を源に東部を貫流する真室川、鮭川とその支流(大沢川、小又川、塩根川、金山川)に沿って集落と耕地が開けた農山村になります。気候は、夏季は高温多湿で冬季は日本海からの北西の季節風の影響が大きく積雪寒冷地となっています。さらに、盆地特有の霧の発生が多く日照時間が少ないこととあいまって農作物の育成に大きな影響を与えており、全体的に厳しい気象条件になります。

 

 

真室川町野菜生産組合ニラ部会について


 

今年度の野菜生産組合ニラ部会の部会員は66戸あり、作付け面積は3,862aになります。部会の特徴として、栽培に置いて4~5人のグループを作り、播種セットや移植機を共同購入し、定期的な栽培講習会、圃場巡回を行っています。また、真室川町酪農振興会の協力で、町内で生産された完熟堆肥の有効利用として、「堆肥マルチ」の技術を確立普及させ、真室川町のニラ栽培の基本記述を確立しています。(雨による泥はね防止、夏場の乾燥防止、化成肥料の低減)

 

 

栽培の概要


 

作型はすべて露地栽培で、出荷時期は、5月中旬~10月中旬になります。過去には出荷期間延長のため、ハウスを利用した栽培も試みられましたが、価格動向や気象条件により定着までには至りませんでした。品種構成は、パワフルグリーンベルトが9割以上となっており、他に秋刈り専用圃場としてミラクルグリーンベルトや他社品種等が導入されています。

栽培の特徴としては、品質維持の観点から、基本的に同じ株からの収穫は年3回までとしていることです。そのため、長期収穫を行うために、春刈り、夏刈り、夏秋刈りの各収穫時期別に圃場を分割しています。各圃場は2~3年収穫で改植を行っています。抽苔時期は品種によって異なるため、それぞれの品種の抽苔が全体の70%になる時期を目安として捨刈りを行っています。

 

 

導入の経緯


 

エナジーグリーンベルトは、4年位前に営業担当さんから少量ではありましたが試作種子を頂いたところから始まっています。当時は試行番号で、特性などは最上広域にら部会での集まりで役員から抽苔期がパワフルより早いという情報を聞いていて非常に期待をしていました。また、最上総合支庁産地研究室の先生がパワフルとエナジーの比較研究を行っていて、エナジーがパワフルと同等の品質を有しているという研究結果をもたらしてくれたことも導入を進める一助となりました。

 

 

 

実際に栽培をしてみて


 

高橋部会長と川又氏の2名に、実際にエナジーグリーンベルトの栽培を行ってみての感想を伺いました。

 

① 収穫物の品質は、パワフルとそん色がなく、夏場のトロケの心配もなく、調 整作業もし易いので作業効率が上がる。

② 分げつ数が少なく、2年株3年株になっても過剰に分げつをすることがなく品質の良い状態で長く収穫ができる。

③ 抽苔が6月末には完了するため、パワフルが抽苔期終わりで収量が著しく落ち込む8月の収穫に持って行くことができる。

④パワフルと異なり休眠しない品種のためパワフルだと年によって収穫が難しい10月にも安心して収穫ができる。

 

以上の点から、パワフルグリーンベルトの使用が難しい時期を補完することがエナジーグリーンベルトを使用することで可能になるので、当産地へ早期導入を進めて出荷量増加、品質向上を図りたいというお声を頂きました。

現在、エナジーとパワフルの組み合わせによる出荷体系の確立に向け、農家への推奨を進めています。

 

 

 

今後の展望 


 

現在、夏場のトロケや出荷数量の減少が課題であり、夏場に出荷する品種を指定し、施肥体系を見直し、検品を強化するなどの対策を講じ、その効果が少しずつ実を結び始めています。今回、エナジーグリーンベルトの登場により夏場の出荷数量増や10月の収穫など明るい展望が見えてきています。

夏場の品質向上、出荷数量の安定化に農協として一層しっかりと取り組んでいきたいと思っています。エナジーグリーンベルトがその手助けをしてくれると感じています。