種苗事業部 産地と栽培情報

2018年

【山形県最上地域】エナジーグリーンベルトで日本一の品質を目指して

山形県 JA金山 営農部
伊藤 洸郁

パワフルグリーンベルトと比べ抽苔が早い

 

 

地域の概要


 

山形県北東の内陸部に位置する最上地域は、北は秋田県南部、東は宮城県北西部に接しています。最上地域の総面積は、1,803.62㎡で、県全体の19.34%を占めます。1市4町3村からなり、当JAはその中の金山町を管内としております。気象条件は、夏は一般に高温多湿で、冬は日本海からの季節風の影響が大きく、積雪寒冷地帯となっています。他の地域と比べると、年平均の降水量は県内4地域(村山、最上、置賜、庄内)の中で最も多く、日照時間は最も少なくなっています。山形県は果樹生産量が全国的にも上位を占める産地ではありますが、この最上地域の農業は稲作の割合が多く、稲作との複合経営において野菜の生産量が拡大してきている地域となります。

 

産地概要


 

金山管内におけるニラの栽培は、昭和55年に1haの定植から始まっております。2年後の昭和57年には栽培者37名へと拡大。「ニラは月給!米はボーナス!」「高齢者になっても続けられるニラ栽培」を合言葉として、ニラ生産拡大に取り組みました。昭和60年には104名の生産者数となり、金山町の一大農業品目となっております。昨年は農家の高齢化に伴い、生産者数49名となっておりますが、主力品目であることは変わらず、栽培面積40haを維持しつつ、品種の組み合わせ・栽培方法の検討により、437tの生産実績をあげることができました。

生産拡大がより一層進んだ経緯は金山町でニラが転作振興作物に指定されたことによる自動播種機・定植機等の機械導入が進んだことによります。当JAの野菜の組織である金山活枠野菜倶楽部で機械を所有し共同利用することで安価で株更新ができることと、定植作業を作業委託できる体制にしたことで面積拡大が容易となり、現在では生産者1戸あたりの栽培面積が増え、中には1haを超える生産者も見られるようになりました。

当JA管内の栽培はほとんどが露地栽培で、出荷時期は、5月中旬~10月上旬です。販路は主に関東市場となります。

品種構成は、選別のしやすさや棚もちの良さからパワフルグリーンベルトが7割以上となっております。しかしながら、パワフルグリーンベルトの抽苔期による出荷量の減少が当産地の問題でありました。

 

 

導入の経緯


 

前段で述べた通り、パワフルグリーンベルトの抽苔期に別の品種を望んでいたことから、新品種エナジーグリーンベルトを紹介していただき試験栽培を行っています。パワフルグリーンベルトの長所である選別のしやすさ・棚もちの良さはかわらず、短所であった抽苔期は期間が身近くあまり顕著に発生しないことから、夏秋ニラ産地において期待のもてる品種であると感じております。また、全シーズンにおいても使用可能と思われるため、夏秋ニラ産地の主力品種になるであろうと考えています。

 

JA金山でのニラ栽培の考え方


 

品種に関わらずニラ栽培においては、品質維持の観点から基本的に同じ株からの収穫は年3回までとし、各圃場は最高で3年収穫で改植を行う事がポイントであると考えます。

一株から最高9回しか収穫できないなんてもったいないという意見もありますが、ニラは刈れば刈っただけ体力を消耗します。生産者の中には収穫2年で株更新を行う方もいることから当産地の品質に対する考え方は長年の経験の中で培われた技術であると感じています。

 

 

独自の取り組みやこだわり等


 

平成5年からは、当JAを含む最上広域野菜振興協議会にら部会において最上地域から生産される"ニラ"を「達者de菜」と命名し、統一ブランドとして販売を行っております。最上地域での予約相対販売や加工ニラの取組み、また、販売面につなげるためにも行政と一体となった指導巡回・講習会・目論会を実施し夏秋ニラ産地として市場より評価していただける産地を目指しています。