種苗事業部 産地と栽培情報

2020年

【宮城県石巻市】本格導入から10年 「若殿」小ネギが選ばれる理由

JAいしのまき 営農部
桃生営農センター
斉藤 慧

 

本格導入から10年 「若殿」小ネギが選ばれる理由

 

 

産地の概要


 

JAいしのまきは、宮城県の北東部に位置する石巻市、東松島市、女川町の2市1町で構成され、平成13年9月に10農協が合併し発足した農業協同組合です。県北東部に位置しながら、一年を通して海洋性の温暖な気候のおかげで寒暖の差がなく、冬でも雪が少ないため施設園芸なども盛んに行われ、小ネギ、イチゴ、キュウリ、ホウレンソウ、ガーベラなどを周年栽培しております。

また、管内中央部および西部地域の地形は平坦で水田に適した沖積平野が広がり県内有数の豊かな穀倉地帯を形成し、主に「ひとめぼれ」、「ササニシキ」を中心に良質で高品質な米が生産されております。特に「ササニシキ」の生産量は全国一位を誇ります。

 

 

スリムねぎ部会について


 

小ネギの生産は、昭和58年より旧桃生町で栽培が始まり、平成14年にいしのまき農協スリムねぎ部会が設立され、現在では部会員28(平成22年より部会下部組織として、後継者で構成する青年部を設置し令和元年4月現在で青年部員11名)、生産面積13.3ha(ハウス約500棟)、年間約350tを生産し、「スリムねぎ」のブランド名で仙台市場や盛岡、秋田、京浜市場へ周年出荷を行っています。

 

 

栽培の概要


 

栽培は周年を通して行っています。播種から出荷までの流れについてはですが、播種は周年を通して直播きで、ごんべえやコンビシーダーなどの播種機を使用しています。

80坪のハウスに0.8~1.2ℓ程度を目安に播種を行っていきます。(播種量は使用する品種や季節によって変えていきます)

収穫までにかかる日数ですが、春~秋までは60~80日程度で収穫になりますが、冬場は120日以上かかってしまう場合もあります。

また、冬場の栽培においては、生育中のネギの凍結および葉折れ防止のため、二重被覆やストーブ、ジェットヒーターでの加温を行っています。

殺草と病害虫防除のために土壌消毒を行っていますが、品質の良いネギを出荷するため致し方ないのですが、その間1か月程度ハウスをお休みする形になってしまいます。(土壌消毒の頻度についても生産者の考え方や圃場条件によって、枚作~年1回と様々)

年間のハウスの回転数については、2~3回転となっています。(年間平均出荷量は1坪あたり10kg前後)

収穫については、手作業で行い、皮むき、根洗いは皮むき機で行っています。従来の手洗い機が多いですが、自動皮むき機の導入も近年は進んでいます。選別調整および包装作業はパート従業員を使って手作業で行い、箱詰めまで各生産者宅で行い、JAの集荷場に夕方出荷しています。出荷されたネギは検査後に予冷庫で一晩しっかりと予冷して、翌朝ふたを閉めて各市場へ出荷されます。収穫は、40~75cmの長さになりますが他産地と異なっている点としては長さでL・M・Sの選別を行っているのに対して、当部会では茎の太さで選別を行っています。

 

 

導入までの経緯(佐藤部会長のお話)


 

若殿が部会に試作として持って来られたのは、20年前位だったと思います。私は当時まだ役員とかではありませんでしたが、若殿が試行番号になりたて位の頃から試作を行い、どの時期に適した品種かを見極めることをしました。採用が決まった当時は、春~秋用品種として推奨されて、冬用品種は他社品種でした。その現状から大きく変わったのが約10年前で冬場でも若殿の生育が良く量をしっかり出せる事が分かり、一気に部会全体で周年品種として広がっていきました。そこまで一気に広がったのは、①他社品種と比較して高品質で多収性、②調整作業や選別作業の効率が非常に良い、特にこの2点だと思っています。現在でも、先程挙げた2点を上回る品種があまり出てきてないこともあり、若殿が10年間不動の人気を有している理由ではないかと感じています。

 

 

今後の品種に望むこと


 

現在、若殿が弱点としている時期を補完できる品種を望みます。新発売となった若月も夏用品種として部会内でも話題に上がるなどして、試験なども行っています。また、より冬場の低温伸張性の強い品種が出てくることも期待しています。

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