種苗事業部 産地と栽培情報

2018年

【埼玉県三芳町】耐暑性に優れ、形状も良い武蔵野交配「ゆりかもめ」 コカブで夏季も安定生産!

埼玉県三芳町
高山 誠二

 

 

 

 

地域概要 関東ローム層に覆われた台地


 

埼玉県入間郡三芳町は首都圏30kmに位置し、埼玉県入間郡の南部、武蔵野台地の北東部にあたります。関東ローム層におおわれたおおむね平坦な台地で、東に志木市・富士見市、南東に新座市、南西に所沢市、北にふじみ野市・川越市と隣接しています。

冬は北西の季節風が強く、湿度の低い晴天の日が続きます。4月から5月ごろの晩霜が、農作物に被害をもたらすこともあります。夏はかなり高温で湿度も高く、しばしば雷雨があります。年間平均気温は14.3度、降雨量は約1500ミリです。

 

 

JAいるま野 かぶ部会について


JAいるま野 共販課 小西

 

埼玉県のコカブ出荷量は全国でも上位に位置しています。その中でもJAいるま野産は大きな割合を占めており、京浜市場の他に東北地方への出荷もしております。平成28年度は約6,000,000束の出荷量となりました。

JAいるま野 かぶ部会では三芳町をはじめ、川越市・富士見市・所沢市・狭山市などで露地栽培を中心に生産・出荷しています。また若い生産者が多く試行錯誤しながら高品質なコカブ栽培を目指しております。

 

 

経営概要 加工用だけで10t/月の出荷量


 

栽培品目はコカブのみで周年出荷しており、私を含め6名で経営しております。コカブは栽培し始めて22年目になります。代々農業を営んでおり

祖父の代から「キュウリ」と「コカブ」を作付し、私は8代目になります。経営面積は露地が役3ha、ハウスが約25aです。露地栽培は季節ごとにベトコン・トンネル・防虫ネットなどを使い分け周年出荷(2.5~3回転/年)、ハウス栽培は露地栽培が困難になる1月下旬~3月中旬出荷で行っております。

出荷は「加工用」と「市場、JA、直売所出荷」がだいたい7:3くらいで加工用が中心となっています。加工用だけで10t/月出荷を行っております。

 

 

導入の経緯 試験栽培での成績から決定


 

「ゆりかもめ」コカブを初めて知ったのは3年ほど前になります。当時、当地域でコカブの球内部が黒変する症状が多発したことがありました。その際に従来使用していた品種の他に数品種試作を行い、その中に「ゆりかもめ」がありました。春~秋にかけて試験栽培を行い、最も成績の良かった「ゆりかもめ」を導入することに決めました。

「肌が白く綺麗な点」「葉枚数の多さ」「肥大の早さ」「形状の揃いの良さ」「播種幅が広い点」などが特に評価できます。

温かい時期でも裂球が少なく、肥大も早いので効率も良いです。また、厳冬期でも球は肥大するので、球のみ出荷する加工用であれば冬季でも栽培ができると思います。ただし、厳冬期には葉が傷むので葉付きでの出荷は難しいと思います。

一方で注意点としては「肥大が早い」ため、計画的な播種・収穫を行わないとスが入ってしまうところが注意点にはなりますが、「ゆりかもめ」の肥大スピードを把握できれば問題にはなりません。

 

新品種「雪牡丹」コカブも作付


 

今年、新発売になった「雪牡丹」コカブについても今年から本格的に導入しています。昨年、少量ではありましたが試験栽培を行ったところ、草丈が伸びやすい環境でも他品種に比べて大人しく、作業性に優れていると感じました。昨年はハウスでしたが、今年は露地栽培にも取り入れています。

 

 

独自のこだわりなど 数々の取り組み


 

土づくりのために毎春、圃場全体に堆肥を入れるようにしています。堆肥は良質な馬糞と鶏糞を混ぜ、数回切り返しを行いながら十分に発酵させたものを使用しています。圃場表面の色が変わるくらいの量を投入しています。

また、昨年から微生物資材「アンナプルナα(株式会社 大興貿易)」の試験を行っております。微生物資材の使用は初めてですが、このようなものも積極的に取り入れていきたいと考えています。

今はまだ模索中ですが「ゆりかもめ」(春~秋)と「雪牡丹」(秋~春)の2品種で執念栽培が可能な手ごたえもありますので、今後栽培経過を確認しながら取り組んでいただけたらと考えております。

 

 

今後求めるもの 収穫敵機の長い特性


 

私のところでは加工用ということもあり通常のコカブより肥大させてから収穫します。「ゆりかもめ」「雪牡丹」ともに作りやすく良い品種ですが、気になる点をあげるとすれば肥大させた際に形状がいびつになることです。肥大させても形状がいびつにならないような、収穫敵機の長い特性があると嬉しいです。この点に気を付けて栽培をしている限りはとても良い品種だと感じています。