種苗事業部 産地と栽培情報

2016年

【茨城県行方市】菜ばななのにクセがない「チンゲン菜ばな」とは

JAなめがた
玉造地区菜ばな部会
部会長 鎌田 正夫

菜ばな用に通常のチンゲン菜より株を大きく生育させる

地域の概要

行方市は、茨城県の東南部にあり、東京都心から約70km、水戸市から約40kmの距離に位置しており、北は鉾田市と小美玉市、南は潮来市に隣接し、東は北浦、西は霞ヶ浦があります。また、霞ヶ浦湖岸の一部は水郷筑波国定公園に指定されており、美しい自然景観を有しています。

 

産地の概要

JAなめがたは、霞ヶ浦・北浦に挟まれ、南北に半島状の地形となっています。傾斜や起伏の多い行方台地には大規模な畑作地帯が、両湖岸には水田地帯が広がり、比較的温暖で気候にも恵まれた農業地域です。台地では大規模畑作によるサツマイモやエシャレットなどの露地野菜、みず菜、ちんげん菜、大葉など施設(ハウス)を用いた軽量野菜が生産されています。両湖岸の水田地帯は、関東地方でも早場米地帯として知られ近年、稲作経営の規模拡大が進められる一方、せり、れんこんや施設(ハウス)により果菜類、葉しょうがなどが生産されており、県下でも有数の多目的産地として農業地帯を形成しています。

チンゲン菜ばなとは

名前の通りチンゲンサイを抽苔(とう立ち)させて、とうの部分を収穫して食べるというもので、JAなめがた玉造地区では20年以上前から栽培され続けています。一般的な菜ばなとの違いは、食べた時にクセがなく、太くても茎の根元まで非常に柔らかく、調理すると甘みが増すためどんな料理にも合います。

栽培の概要

私がチンゲン菜ばなの栽培を始めたのはもう20年以上前になります。最初は、鉾田市に親戚がいる生産者が4~5年作り続けているのを見たのがきっかけで、次第に玉造地区で栽培を始める生産者が増えていき一時は玉造地区だけで100名以上の生産者が栽培に取り組んでいました。当初は、部会として発足はしておらず生産者同士で規格などを統一して出荷を行っており、出荷する際も今のように差別化を図っておらず一般的な菜ばなと同じ扱いで出荷を行っていました。菜ばな部会として正式に発足したのが今から13年前の2002年になります。最盛期100名以上いた生産者も今では高齢化や後継者不足が響いてしまい、年々減少傾向にあります。
チンゲン菜ばなは出荷時期が非常に短期間のため、ほとんどの生産者が他品目と組み合わせて栽培を行っていて、私の場合はエシャレットと組み合わせています。エシャレットの栽培が終わった圃場約25aを活用してチンゲンサイの播種を行います。労力は私と妻の2名で行っています。施肥は播種前に土壌分析を行いどのくらいの肥料を入れるか決めていて、普段は農協の肥料を5~6袋程度入れます。堆肥も1反歩あたりに約1t程度入れています。播種は10月上中旬に播種するのがほとんどで、畝間60㎝×株間5㎝に播種機を利用して1粒ずつ直播しています。目標としては1反歩で2dL缶を1缶蒔ききるのが理想です。品種としては「夏賞味」のような晩抽性を持っていないものを使っています。収穫期は、2月中旬から4月いっぱいまで行っていて、私は行っていませんが被覆資材を利用して露地トンネル栽培を行い、出荷を早くしている生産者もいます。最初に親茎を収穫して、側枝の発生を促して出てくる側枝を順次収穫していきます。花が咲いてしまうと出荷できなくなってしまうので、収穫が始まると毎日忙しく出荷を行っています。出荷体系としては、FG袋と束出荷の2本立てでずっと行っていましたが、束出荷の方は棚持ちが悪いため2年前にFG袋に統一しました。規格は4㎏箱で200g1袋で20袋入りになっています。

今後の展望

ここ数年市場からの評価が非常によく、単価も安定しています。これからもチンゲン菜ばなのPR活動を積極的に行い、認知度を高めていきたいと考えています。また、抽苔期のずれる品種を使い少しでも出荷期間を長くしたいと部会では品種の検討も行っていきたいと思っています。武蔵野種苗園から販売されている「華賞味」にも興味があるので試作を行ってみたいと思います。

 

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