種苗事業部 品種特性と栽培のポイント

2014年

武蔵野交配「ホワイトパラソル」「雪まつり」「MSD-1059(2020/10販売中止)」の品種特性と使い分け

(株)武蔵野種苗園 新治育種農場
大川 英佑

はじめに

カリフラワーは地中海沿岸が起源で、日本へ初めて入ってきたのは明治時代と言われています。その後、各地の気候に合わせて品種の多様化が進み、品種の使い分けと産地リレーによって現在では高品質な収穫物が年間を通して入手できるようになりました。しかし近年、温暖化による夏場の高温や極端な降雨、乾燥など、もともとおだやかな気候を好むカリフラワーの栽培は厳しい状況となっています。
弊社ではそういった厳しい気象条件に対応できる、耐暑性や耐湿性に優れる高品質なカリフラワー品種の育成に努めています。そして今回、MSD-1059(2020/10販売中止)が新たにラインナップに加わり、さらに充実した武蔵野種苗園のカリフラワー品種の中から、おすすめ3品種の品種特性とその使い分けについて紹介いたします。

品種特性
武蔵野交配 ホワイトパラソル:耐暑性・耐湿性に優れる超極早生種

 

  • 定植後40-45日で収穫
  • 耐暑性に優れ関東平坦地で9月中旬どりが可能
  • 超極早生種としては大型で重量感のある花蕾
  • 収穫揃いが良く収穫作業性に優れる

 

武蔵野交配 雪まつり:耐湿性に優れる高品質の早生種

 

  • 定植後約65日で収穫
  • 早生種としては大型で重量感のある花蕾
  • 花蕾はきめ細かく純白
  • 耐湿性に優れ栽培しやすい

 

武蔵野交配 MSD-1059(2020/10販売中止):春夏まき可能な高品質の中早生種

 

  • 夏まきでは定植後80日、春まきでは60日で収穫
  • 草姿立性で包葉性あり作業性に優れる
  • 盛り上がり良くボリュームある花蕾
  • 異常花蕾が少なく適応幅が広い

 

栽培上ポイント

施肥量・栽植密度は一般的な栽培方法に準ずるが、各作型における注意点は以下の通り

 

夏まき秋どり栽培

 

ホワイトパラソル・雪まつり

  • 肥料設計は元肥を中心とするが、雪まつりは草勢が強く多肥により花蕾形状の乱れや割れが起きるため他品種の1~2割程度減肥とし、一部を草勢に応じて追肥で補うと良い。
  • 冷涼地では育苗時期が低温のためボトニング※1に注意する。育苗は温床で18℃を確保し、定植後は被覆資材を活用する。
  • 中間地・暖地では育苗時期が非常に高温になる。発芽するまでは地温が30℃以上にならないよう管理する。
  • 栽培期間が短い超極早生種・早生種では初期生育が重要である。定植後活着するまで適宜灌水を行う。
  • 花蕾を白く仕上げるためには葉折り、縛葉による遮光が必要(特にホワイトパラソル)。
  • 初秋は気温が高く収穫時期を逃しやすいため取り遅れに注意する。適期に収穫しないとアントシアンが発生しやすい。

 

MSD-1059(2020/10販売中止)

  • 高温期の急激な肥効により、花蕾形状の乱れ、割れが起きやすいため無理な早まきはしない。
  • 元肥は全体の半分程度とし、その後草勢に応じて数回に分けて追肥する。
  • 草姿立性で花蕾の包葉性も比較的あるが草勢や栽培時期によっては包葉が弱くなる場合もあるため葉折り、縛葉を行うことを推奨する。

 

冬春まき初夏どり栽培

 

MSD-1059(2020/10販売中止)

  • 育苗時期が低温のためボトニング※1に注意する。育苗は温床で18℃を確保し、定植後は被覆資材を活用して初期生育の促進に努める。
  • 早まきや多肥により草勢が強くなりすぎると本来の出蕾期より遅れ、そのためにフィジー※2等の異常花蕾が発生しやすくなる。播種期を守り適度な草勢の維持を目指す。
  • 収穫期は高温となり、秋どり栽培に比べて生育スピードが早く収穫遅れとなりやすいので計画的な作付けを心がける。

 

冬春まき初夏どり栽培

最後に

葉菜などに比べ、出荷時期の予想が困難であるとされるカリフラワーですが、時期により適切な品種を選択し、計画的に作付けすることで連続出荷も可能です。近年、直売所ブームにより今までマイナーだった野菜が見直されています。ビタミン豊富でおいしいカリフラワーを作ってみませんか?

 

※1 ボトニング(早期出蕾):花蕾肥大に必要な葉数を確保する前に花芽分化し、結果的に小花蕾となること
※2 フィジー(毛羽立ち):花蕾肥大期の高温や生育過剰で苞が発達して毛羽立った状態になること

 

 

 

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