種苗事業部 産地と栽培情報

2016年

【茨城県】武蔵野交配 粋醐味を栽培して

葉柄幅広く、作業性も良い!

茨城県
吉田 晴彦

春・秋栽培で評価の高い「粋醐味」

地域の概要

 私の圃場は茨城県の県西部にあり、坂東市と常総市の堺付近にあり、関東平野のほぼ中心部に位置しています。年間を通じて穏やかな気候に恵まれ、年間平均気温は13℃~14℃という温暖な気候で、年間降雨水量も約1,300mm前後と野菜作りには適した気象条件にあります。また、河川にも恵まれ、地下水等の水量も豊かな土地柄です。稲作はもちろん、レタス、ハクサイ、キャベツ等の野菜、ナシ等の果実類の生産も盛んで専業農家が多く活躍されている地域です。


栽培の概要
  • 株間 15cm×16cm
  • 播種 3月下旬頃~順次
  • 収穫 5月中旬頃~7月上旬頃まで
  • 施肥 混合堆肥肥料、完熟堆肥、もみ殻

 

 チンゲンサイの栽培を始めて8年になり、キュウリ、メロン等を栽培していましたが、年間を通して栽培できる品目としてチンゲンサイを栽培するに至りました。年間8作行っており、収入面でも安定できるようになりました。
「粋醐味」は3月下旬から順次播種し、7月上旬頃までの収穫品種としています。5月~6月にかけては、ハウス内の土壌表面が乾くので、灌水管理にも気を使っています。ハウスは砂地で、露地は黒ボク性質の土壌になっており、ハウスでは透明マルチを使用しています。化学肥料節約栽培を心掛け、こだわりの自家製完熟堆肥(鶏糞または牛糞、もみ殻、落ち葉など)を使用し、化学肥料を抑えた栽培をしており、安全でおいしい野菜を栽培することに情熱を燃やしています。
出荷先は「JA常総ひかり」で、他にレタス、ズッキーニ等を栽培しており栽培面積は合計で約8haになります。チンゲンサイの出荷形態としては、300g袋詰めで、1箱3㎏(10袋)。年間6万~6.5万箱を出荷しています。

粋醐味を栽培して

 春先から初夏までの品種を模索しているなか、㈱武蔵野種苗園に勧められた「粋醐味」を試験栽培として2年程行いました。晩抽性が安定しており、チップバーンも出にくく、伸びも良く、葉色・葉柄の色も濃く仕上がり、丸葉で葉身幅があって株張り・尻張りのよい、形状がまとまった品種です。出荷先からの評判もよく、初夏どりまで栽培できる品種です。猛暑前までの栽培品種としては良くできた品種であると言えるでしょう。「春賞味」も姿形は良かったのですが、背丈が幾分足りなかったこともあり、品種を決めかねていました。そこを「粋醐味」はカバーしており、30日~40日の栽培期間で伸びの心配が解消されました。もう少し長さが欲しいというところには、栽培する価値のある品種と言えるでしょう。調整作業も容易な品種なことから、幅広い方々への対応も可能な品種だと思います。

今後の課題

 「白さび病」にはあまり強い品種でないので、ハウス内換気・薬剤散布などの管理が必要となるのが気になる点です。今後の課題としては、「白さび病」を含む病気に強い品種を期待します。また、「粋醐味」の後作用(夏収穫用)として、チップバーンに強く、耐暑性及び乾燥に強い品種を、併せて期待しています。

また、㈱武蔵野種苗園の育種農場が同県内(土浦市)にあるので、育種担当者や営業担当者が見に来てくれるのも心強いところです。品種の特性や疑問に思ったことを直接話し合える環境は大事かと思います。今後も試作品種等があれば協力し合い、それによって良い品種が生まれれば、私にとっても幸せです。

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