【静岡県浜松市】武蔵野交配 冬大賞・粋醐味を栽培して
春・秋用、冬用の新品種に期待!
静岡県浜松市
川合 信一・翔
冬季栽培で評価の高い「冬大賞」
地域概要
浜松市は静岡県の西端で、東京と大阪のほぼ中間に位置しています。面積はおよそ1,558km2と非常に大きく、市としては岐阜県高山市に次いで全国2位の面積を有しています。
浜松市は日照時間が全国トップクラスの温暖な地域であり、農業にとって非常に恵まれた環境にあります。チンゲンサイ、葉ネギ、セロリ、タマネギ等に代表される野菜の生産に加え、ミカン、ピオーネ、ガーベラ等の果物・花の生産も盛んです。
また、農業だけでなく「浜名湖うなぎ」に代表される水産業なども盛んな地域です。さらに観光・レジャースポットとしても人気であり、近年では国内だけでなく海外からの観光客も増加しています。
栽培概要
川合氏は静岡県浜松市で20年に渡りチンゲンサイを栽培しています。栽培は全てハウスで行っており、4~5連棟のハウスを計8圃場、約110aの作付面積で周年栽培を行っています。労力は家族3名に加え、一年を通じて13名のパートさんが収穫や出荷の作業を行っています。
栽培は年平均7~8回転を目安に行っていますが、周年で栽培を行っていると畑にも疲れが溜まってしまうため、毎年総面積の1/4以上は休ませるようにし、どの畑も4年に一度は休憩期間を置くようにしています。
品種については現在、春秋は「粋醐味(MSW-1081)」、夏は「他社の夏用品種」、冬は「冬大賞(MSW-1082)」というように3品種を使い分けています。また時期によって栽植密度も変え、夏場は広めの間隔を取って過湿によるムレの対策を行うなど、気候に合わせた栽培管理、品種選定を心がけています。
出荷量は時期によっても差はありますが、冬場に関しては日量約600~700ケース(2kg/ケース)を出荷しています。
「冬大賞」導入の経緯
我が家では、2014年の秋に「冬大賞(当時は“MSW-1082”)」の試験を始め、正式販売となった2015年の冬から本格的に導入しました。
「冬大賞」は葉色が非常に濃く色持ちも良いため、冬季でも在圃性に優れた点が魅力の品種です。加えて、立性感が強くスッとした形状である点も気に入っています。以前使用していた品種はややトックリ型で葉が開く形状であったため、袋詰めの際に葉が傷つきやすいという難点がありました。そこに「冬大賞」を試験導入したところ、収穫作業を担当しているパートさんの間で「この品種は収穫調整作業がしやすい」と評判になりました。このパートさんの声も導入に至った大きな理由の一つです。袋詰めの作業をスムーズに行えるようになり青果物への傷も減ったことで、結果的に品質と作業性の向上に繋がりました。
「冬大賞」の栽培のポイントですが、他の品種と比較して水を好む品種であるため、その点を意識して栽培するとより良い品質を期待できます。また、「冬大賞」は元々葉色が非常に濃い品種であり、水分をしぼった栽培をしてしまうと葉色が濃くなりすぎてしまいます。それを防ぐためにも潅水回数・量を気持ち多めに管理する点がポイントになると考えています。
また、冬場の栽培では非常に良い特性を発揮してくれますが、暖かくなってくると葉が旺盛になりすぎる傾向があるため気候を見て品種を使い分けていくことをお勧めします。その年の気候や地域にもよりますが、我が家では3月上旬頃から春秋用品種の「粋醐味」も定植し始め徐々に品種をシフトしていくようにしています。
今後について
「冬大賞」については今季からが本格的な導入であるため、今後の栽培の状況を見て特性を見極め、よりよい品質のものを作っていければと思っています。
現在、最も品質の安定が難しいのは夏場の品種であるので、今後は夏場に節間が上がりづらく、芯焼けの出にくい品種が開発されることを期待しています。
関連情報
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