種苗事業部 産地と栽培情報

2016年

【埼玉県八潮市】武蔵野交配「里きらり」コマツナを栽培して

夏季栽培でも葉色濃く、収量性に優れる

埼玉県八潮市
恩田 圭幸

盛夏期でもガッチリ育つ「里きらり」

地域の概況

八潮市は埼玉県の東南部、東京都心から約15kmの位置にあり、周囲を埼玉県草加市、三郷市、東京都足立区、葛飾区と接しています。市域は東西5.23㎞、南北7.45㎞、面積およそ18㎢の平坦な地形であり、北足立台地と野田台地にはさまれた中川低地の南端に位置し、中川と綾瀬川の自然堤防と後背湿地からなっています。

八潮市の農業はほとんどが畑作で、主な栽培品目は「コマツナ」「エダマメ」「ネギ」「ホウレンソウ」「トマト」「サントウサイ」「ブロッコリー」などになります。首都近郊という立地条件を活かし新鮮さを売りにしており、市況では都内の消費者から高い信頼を受け品質の高い野菜が出荷されています。

 

栽培概況

我が家では天窓が開くビニールハウスが全14棟あり、作付面積は約60aでコマツナを周年栽培しております。労力は家族4名です。

播種は時期によって日を空ける間隔を調整しますが、月平均で5棟、年間60棟ほど蒔きます。収穫量と生育状況のバランスを見ながら年間5回位ハウスをローテーションさせて営農しています。しかし、ローテーションもこれだけすると畑にも疲労がたまり、次の生育に連作障害をきたしてしまうため、収穫後のハウスは天窓を開け畑に自然の雨水でミネラルを入れて補う様にしています。

特に土作りにも力を入れており、秋頃には春から熟成させた家畜の堆肥をハウス1棟あたり700kgほど投入したり、播種する前には必ず土壌改良菌剤と米ぬかを配合し発酵させた肥料を約40kg投入し地力をつけます。

収穫作業はコマツナを収穫し、その場で紫色の野菜専用結束テープで束ねます。その後、自宅へ持ち帰って根を洗って水切り、箱詰めを行ない冷蔵庫へ一晩保管し翌朝に市場へ出荷します。日量500束前後を目安に栽培計画を立てています。

「里きらり」を栽培して

今まで様々な品種を試作しましたが、「里きらり」を栽培して6年程になります。 葉肉の厚さ、極濃緑色、そして収量性にとても魅力がある品種です。
自分でも栽培してまだまだ未熟なところはありますが、上手に生育させるポ イントは「水管理」と「換気」をまめに行う事だと思います。「里きらり」は水を多く必要とする品種なので、散水のタイミングは他品種と比べて難しく、生育状況と土壌の状態等どの時点に水をあげるかでだいぶ伸び方が変わります。あわせて天候にも左右されるのでハウスの天窓や脇の開閉等で生育コントロールし、自然のミネラルを取り入れる事も欠かせません。
播種は3月~10月位までを目処に行いますが、夏蒔きに強く力を発揮しますが秋以降は伸び方が格段に遅くなります。

 

今後について

「里きらり」は上記の通り長所もありますが、最大の弱点をあげるとすれば茎の付け根がしっかりまとまらないことが多い点です。そのため結束する際に葉が折れやすく外見が悪くなってしまうことがあります。この点が品種改良されれば、収量性もさらに増加しますし生産ファンも増え、消費者の方々へもっと認知される品種になるかと思います。
最後に、これからも低農薬で安心・安全なコマツナを消費者の方々へ提供出来るように日々勉強して行きたいと思います。

 

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