種苗事業部 産地と栽培情報

2013年

武蔵野交配「里きらり」コマツナを導入して

夏でも生育がゆっくりで株張りの良い

群馬県
JA太田市 営農部 園芸課
藪塚野菜センター長 石田 勝美

地域の概要

 太田市は、平成17年3月28日に太田市、尾島町、新田町、藪塚本町が合併し、人口21万人を超える新市として誕生しました。関東平野の北部、群馬県南東部に位置し、南に利根川、北に渡良瀬川という二つの豊かな水量を誇る河川に挟まれた地域にあります。日照時間が年間を通して長く、水はけの良い平坦地から、さまざまな園芸作物が栽培されています。

産地の概要

JA太田市は群馬県の東部、太田市内の旧太田市地区と藪塚地区を管内とする農協です。藪塚本町の農業は昭和になってからは養蚕、スイカ、ダイコンが経営の柱となっていましたが、昭和40年に小玉スイカが導入されてからは、ハウス、トンネル栽培の面積が急速に伸び、大玉スイカの作付面積を大幅に上回るようになりました。またハウス栽培によるホウレンソウの周年生産を行う生産者も多く、部会員は約130名、延べ面積220haとなっています。他にもニラ、ナス、キュウリなど多くの品目の扱いがあります。


コマツナ導入と 「里きらり」指定品種化の経緯

 前記のように藪塚地区はハウス栽培によるホウレンソウの産地となっていますが、近年、土壌消毒を行っても連作障害による萎ちょう病に悩まされるようになり、それに加え、異常気象の影響で盛夏期にホウレンソウを栽培することが難しくなってきています。
 今回、「里きらり」コマツナを導入したのは、以前、武蔵野ニュースNo.27に掲載させて頂いた「スターライト」オクラの早出し栽培と同様、輪作作物によるホウレンソウの萎ちょう病対策の一つになります。
 萎ちょう病対策としての品目は上記の他にもシュンギクなどがありますが、ホウレンソウと同じような感覚で作ることの出来るコマツナが生産者に最も受け入れられています。
 今までコマツナの作付けが極わずかであったため品種も何を使用して良いものかわかりませんでした。そこで本格的に盛夏期栽培のコマツナを導入するため、昨年度様々なメーカーの夏用コマツナ品種を試作しました。5、6品種前後はあったでしょうか。
 夏に強いと言われているコマツナでもこの地域の盛夏期の暑さ、さらにハウスの中という条件はかなりこたえるようです。夏用とうたわれている品種であっても、「徒長しボリュームが出ない(そのため、袋詰めの際の入り本数が増え、作業性が低下する)」「生育が早いため葉肉が薄くなり、収穫後すぐに萎れてしまう」「出荷後、黄化・トロケなどのクレームが起こる」など問題点が多く上がってきました。しかし、このような問題点をほぼクリアしていたのが「里きらり」でした。
 「里きらり」の良い点は「夏場でも生育がゆっくりとしている点」です。そのため、盛夏期であっても「株張りが良い(6~8本くらいで1袋となるため作業性が良い)」「葉肉が厚く葉色も極濃緑のため、収穫後の萎れが非常に遅く、出荷先からのクレームも少ない」という点が、他品種よりも優れている点として特に評価されています。
 昨年の試験を経て、今年度「里きらり」を使用してコマツナを作付けした生産者は約30名まで増加しました。




「里きらり」コマツナを栽培してー生産者:清水さんー

 5.4m × 36mハウスでおよそ80aの栽培面積でホウレンソウを周年栽培しており、労力は夫婦2人とパートさん3人です。しかし、前記にもあるように、こちらのハウスでも盛夏期は萎ちょう病が発生し、悩みの種になっていました。そこで昨年、農協からコマツナの試験を依頼し「里きらり」ともう1品種を試作しました。すると、「里きらり」の方が生育は遅いものの、「ボリューム感」「作業性(下葉のかき易さ)」「葉肉の厚さ・葉色」などの点で非常に優れていました。特に、萎れにくさが抜群で、朝収穫したものを夏場の作業場に夕方から翌朝まで置いておいてもシャキッとしていました。
「里きらり」を播種するのは5月上旬~8月上旬くらいまでです。それ以降は段々とホウレンソウの播種に戻していきます。播種はごんべえで行い、株間4.5cm×条間15cmです。潅水は2日おきに30分~1時間くらいです。潅水で気を使う点は、如何に均等に行うかです。均一に潅水が出来ないと生育が不揃いになり、最終的に歩留まりが下がるためです。遮光ネットも発芽の時と、収穫3、4日くらい前から使用します。収穫や管理作業は早朝と夕方に行い、日中は袋詰め作業にあてています。
 夏場でもボリュームがあり、作業性にも優れる「里きらり」コマツナは本当に素晴らしい品種だと思います。

今後の展望

 今年度、作付けを行わなかった小玉スイカやホウレンソウ生産者の中にも、来年度は作付けを考えている生産者もいるため、面積がさらに増える可能性もあります。今後、より良いコマツナ生産が可能となるように「遮光資材」や「葉面散布剤」などの試験も積極的に行っていく予定です。


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