種苗事業部 産地と栽培情報

2014年

武蔵野交配「宝みどり」カイランを栽培して

高知県
JA 高知市グリーンファーム高須店
高須・五台山地区営農渉外 横田 一歩

産地の概要

 JA高知市は高知県中央部に位置し、海岸部から中山間地域まで幅広い地域で、県都高知市を抱えることから、軟弱野菜をはじめ、野菜、花き、果樹共に多種多様な品目が栽培されています。
 一方私が担当している高知市東部地域は、海抜0メートル地帯も多く、一度雨が降れば2~3日は水が引かない圃場も珍しくありません。当地区では古くから早場米、また水稲2期作の地として水稲中心の栽培が行われてきましたが、水稲の生産調整や米価の低下もあり、稲刈り後の8月中旬より翌年の2月下旬頃までの水田を利用してのキャベツ、ブロッコリー、レタス、ハクサイ等の野菜作りが行われるようになりました。しかし、前途の土壌条件から、その年の天候により栽培結果は左右され、安定した収入につながらない事もありました。

カイラン「宝みどり」の導入

 平成21年に高知県の高知中央農業改良普及所を通じ武蔵野種苗園より、湿害に強い品目としてカイラン「宝みどり」を紹介頂きました。早速3戸0.5aにて試験栽培を行ったところ、湿害にも強く旺盛な生育を確認でき、冬期の露地栽培においても品質等問題なく良好な結果が出ました。また、カイラン自体甘みもあり癖も無く、とても美味しい野菜であると実感しました。
 カイランは定植後から収穫までの日数が短く、収穫期間が長いため、安定した収入が得られると生産者からも好評で、翌22年には6戸12aで栽培。23年は13戸1haとなり、25年現在は1.7ha14戸。さらに面積、生産者共に今後も拡大の予定です。

栽培概要

 現在カイランの栽培については「JA高知市東部露地野菜部」が中心となっており、播種作業より部会の共同育苗ハウスによって定植直前まで一括した育苗管理を行っています。

 稲刈り作業の一段落した8月中旬より9月初旬まで週1回、他の野菜と共に播種を行います。9月中旬より10月初旬までに定植。10月下旬ごろより収穫、出荷開始となり、2月初旬まで収穫作業が続きます。
 10aでの収量は部会平均では約700㎏となりますが、1tを超える収量を上げる生産者もいます。
 冬期の栽培であることもありますが、病害虫にも強く、比較的栽培も容易ですが、常時風の当たる圃場、乾きやすい圃場では生育が悪い傾向が見られます。

カイランの販売拡大への取組み

 カイランは南アジアではポピュラーな野菜で、チャイニーズブロッコリーやチャイニーズケールとも呼ばれています。本来は暑さにも強く夏場に栽培される作物ですが、冬期に栽培することで甘みも増し、葉の部分までおいしく活用できます。
 本場中国においても冬場のカイランは高級食材として扱われます。また中国では「カイランサイ」として葉柄部も利用されていることから私どもも商品名を「芥藍菜(カイランサイ)」として関東、関西市場を中心に出荷しています。

 また、高知市内全域の学校給食にも取り入れてもらい25年度では820㎏を使用いただきました。
 学校からの声として「湯通しをした後は鮮やかな緑色となり、料理の彩としても非常に映えて良い」「子供達からも“おいしい”と評判も良い」とのことです

最後に

 当地区での栽培も始まったばかりですが、生産者からも「適地適作」と評判も良く、出荷先からも好評で、消費者の方々からも多くの問合せを頂いています。
 まだまだ国内では一般に知られておらず、現在は業務用や海外出身の方、海外生活の経験がある方が中心となって購入されていますが、地元でも一度食べられた方は再度購入されも好評であることから、今後に期待の持てる品目であると実感しています。



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