武蔵野交配「吉宗ネギ」を導入して
茨城県
JA岩井 営業課
後藤 憲司
産地の概要
JA岩井は、茨城県の南西部に位置し、平成17年3月に旧岩井市と旧猿島町が合併して誕生した坂東市にあります。地形は、おおむね平坦で、地質の大部分は猿島丘陵といわれる洪積層の畑地及び山林が広がっています。また、沖積低地には田園が開けています。
気温は、年平均13.9℃と比較的温暖で、降水量は年間1,200mm前後で、冬は北西の季節風、夏は南風が多く一般に湿度も高い地域です。
農業においては、都心部より60㎞圏内の都市近郊型営農地であるということが大きな特徴と言えます。
管内の農業は、こうした自然条件のもとに古くから野菜作りが盛んで、現在466戸の組合員が園芸部会に所属しています。夏ネギの他にレタスが県の銘柄産地の指定を受け、様々な品目の生鮮野菜が首都圏へと出荷されています。
特に、ネギは年間約200万ケース/5Kgの出荷数量で、約26億円の販売額があり、その内夏ネギは約150万ケースの出荷数量で、全国有数のネギ産地として国の指定野菜産地となっています。ネギの栽培歴史も60年と長く、近年は、ねぎ・レタス野菜名人グループ化、専用肥料の開発・普及など先進産地として評価され、 ブランドとして市場取引されています。
導入の経過
夏ネギの7月下旬から8月出荷では、ゲリラ豪雨など気候の変動による影響から従来の品種では、急激に太り、首部のバラケや軟腐病の発生につながるなど秀品率の低下が問題視されていました。このような中、平成21年に武蔵野種苗園の営業担当から「吉宗」の紹介があり、試作が始まりました。試験を繰り返したところ、このような症状が軽減されたため、平成24年2月から種子注文書に新品種として紹介し、管内での作付けが始まりました。
管内では、毎年5月、6月、7月、8月収穫の4つの作型で管内7地区より、推薦のあった各作型の14圃場を対象に、ネギの品評会(立毛競作会)を行っていますが、「吉宗」導入後も7月収穫と8月収穫の部において、上位入賞するなど安定した評価が得られており、種子の注文数も年々増加しています。これらのことから「吉宗」は、12月~2月上旬播種、3~4月定植、7月下旬~8月収穫の作型で、十分推奨できる品種であると思います。
「吉宗」の特徴は以下の通りです。
【長 所】
- 首部の締りが良く、襟のバラケが少ない。
- 葉長が短く、台風などの風害による葉折れが少ない。
- 葉枚数が多く、病害が出ても出荷に必要な葉枚数が確保できる。
- 太りは極端に良いとは言えないが、遅すぎずちょうどいい。
- 在圃性もあり、適期収穫の幅がある点が良い。
- 耐病性は、従来の品種と遜色ない。
【短 所】
- 葉が軟らかく、収穫作業で扱いにくい面があり、もう少し葉がしっかりしている方が良い。
- 晩抽性が無いため早出しには向かない。
(その理由として、今年の12~1月播きで、定植後4月末の寒さの影響で抽苔が発生。平成22年に春遅く雪が降った時も同様のことが起こった。晩抽性を持たしてくれると早い時期から安心して播けるので、そのような特性も加えて欲しい。)
今後の要望
今後、生産現場から品種改良に望むことは、気象変動に対して鈍感で、耐暑性があり、今年のように極端な乾燥の年でも襟が伸びあがり、根張りが良く湿害に強いこと、白絹病、軟腐病など土壌病害に強い品種を要望しています。
早太りに関しては、「吉宗」のように程々で良いので、L中心に揃う在圃性が良いものが適していると思います。
最後に
JA岩井は、昭和43年にJA、同園芸部会が発足以降、常にポジティブに野菜の先進地として全国をリードしてきました。今年で45周年の節目の年を迎え、現在、持続的農業の取り組みや効率的輪作体系の推進、堆肥散布システムの構築やGAPなど食の安全対策なども積極的に取り組んでいます。
今後の展開として、平成20年に策定した 産地ビジョンの中間検証から新産地ビジョンを導き出し、その中の「食の安全・安心取組み強化」や「ブランド力強化」を中心に「おもてなしの心」で新ビジョンの達成をめざしていきます。
また、今年は「全国ねぎサミット2013」が11月30日~12月1日に坂東市で開催になりますので、行政と一体となって成功に向けて取り組んで参ります。
関連情報
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