種苗事業部 産地と栽培情報

2013年

武蔵野交配「吉宗」ネギを栽培して

夏秋どりから秋冬どりまで作型の広い

埼玉県越谷市
生産者 鈴木 雅晴

産地の概要

 越谷市は埼玉県の南東部に位置し、東京都心から30km圏内という交通の便に恵まれ、急激に都市化が進んでいますが、市内には元荒川、古利根川が流れ、河川の合流地点の沖積地周辺の土壌を利用し、ネギ・コマツナなどを中心に大消費地向けへの野菜が栽培されています。

 鈴木雅晴氏は ネギの代名詞とも言われた「吉蔵ネギ、元蔵ネギ」を育成した鈴木元吉氏のご子息であり、ご自身も元晴晩生ネギ、吉晴ネギなどを作出された育種研究家でもある。


越谷市中島地区のネギ栽培の変遷

 越谷市中島地区では周年栽培されており、収穫したネギは主に業務用として出荷されています。かつては9月播種で12月定植、翌年にネギ坊主を切り6~7月出荷という作型がありましたが現在ではトンネル栽培に変わりました。
 ネギ栽培の歴史は古く、100年以上前から栽培しています。当時から千住にあるネギ専門の市場、山柏(やまがし)市場に業務用として1束の重さが約30kg(※写真1)で出荷されてましたが、現在は1束の重さが6~8kg(※写真2)で出荷しています。業務用と言っても現在のような加工用という意味ではなく、食にこだわる東京の蕎麦屋や食事処への納品ということです。
昔から出荷されるネギに対する要望がかなり厳しく、山柏市場への出荷は規定の品質、食味をもっていなければならず、明確なブランド品として流通しています。しかし、時代の流れとともに現在ネギ栽培農家は、数軒ほどになっており、作業の楽な葉菜類(コマツナ、アサツキなど)に転作する農家も多くなってきています。現在は、山柏市場だけでなく地元市場に出荷する農家、直売所やスーパーの地元産コーナーで販売する農家もあります。

「吉宗」を栽培して

 吉宗ネギは1月中旬播種、ペーパーポットにて育苗し、3月下旬定植、8月から出荷の標準栽培型にて栽培しています。肥料は後々生育コントロールができなくなるため、ロングのものは使っていません。土寄せの最後は葉鞘の緑と白の境がぼやけないよう素手で隙間のないように土を寄せます。こだわりのネギ作りの作業です。
 越谷では早太りの品種が好まれますが、夏越しが良いため作型の適応性が広く夏秋どりから秋冬どりまで安心してつくれる吉宗はある程度の規模を持った生産者には好まれると思います。また、吉蔵ネギの系統を受け継いだだけあって夏時期の首の締まりが良く、夏場の欠株も少なく、食味も良好なので今後の吉宗ネギに期待される方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。



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