種苗事業部 産地と栽培情報

2013年

武蔵野交配「冬里」の導入について

厳寒期の伸長性に優れ、収穫・調製作業のしやすい

福岡県朝倉市
生産者 江藤 拓也

地域の概況

 私が住んでいる朝倉市は、筑後平野の北東部にあり、筑後川の中流域にあたります。比較的水はけが良く、肥沃な土壌であるため、葉菜類の栽培に適しています。気象条件は、年間平均気温15.6℃、年間降水量1,860.4mm ですが、内陸部にあるため、近隣の地域と比べて夏は高温、冬は低温になり易い傾向があります。


経営の概要

 私は、野菜生産組織「太郎グループ」に所属しています。グループは、生産者10名で構成し、施設栽培(約18ha)を中心に、小ネギ、コマツナ、ミズナ、ホウレンソウなどを周年で出荷・販売しています。
特徴としては、パッケージセンターを所有し、量目、荷姿など取引先の要望に細かく対応することで有利販売を図っています。そのため、生産者が袋詰め、箱詰めをすることはなく、収穫物はコンテナに入れてハウスの前に置いておくと、1日数回冷蔵車が回収に来ます。生産者は生産に集中することができ、規模拡大を図っています。
私は、ハウス38 棟(1.4ha)で、主にコマツナとホウレンソウ(露地及びハウス)を栽培しています。労働力は、私、両親、従業員1名、パート4 名、外国人実習生2 名です。

栽培の概要

 以前は、主に小ネギを栽培していましたが、コマツナ中心の経営に転換しました。コマツナは、生育期間が短く、収量性が高いため、経営に対するリスクが低いと考えます。しかし、単価は他品目に比べるとやや低いので、病害虫などでの失敗がないように注意しています。
生育期間は、夏季で28日、冬季で70日程度です。ハウスの回転数を重視すると、地力の消耗などの悪影響があるため、早く回す時期とゆっくり回す時期を分け、メリハリを付けるようにしています。
土づくりとして、年に1 回、土壌消毒と堆肥の投入を行っています。
堆肥の種類は土壌分析の結果で、牛ふん堆肥を入れるか、バーク堆肥を入れるか決めています。石灰資材も土壌分析の結果により決めていますが、近年は適正pH内で安定しているハウスが多いので、年に1回程度です。肥料は、前作の窒素残量も考慮して1作あたり窒素成分で10kg/10a を目安に、時期によって増減させています。

「冬里」導入の経緯

 前述のとおり、当地は内陸性気候のため、近隣の地域と比べても冬季の冷え込みは厳しい状況です。よって、低温伸長性が、優れている品種を探していました。
そのような中、普及指導センターから「冬里」の情報を得て試作したところ、それまでの品種に比べて、厳寒期で5~7日程度生育が早く、導入を決定しました。


「冬里」を栽培して

 低温伸長性については、申し分ありません。非常に助かっています。また、収量性も高く、立性で調製がしやすいため作業効率も良く、いい品種です。
私達の地域での注意点としては、厳寒期はハウスを閉め込む時間が長くなるため、特に換気不足になりやすい連棟ハウスでは、べと病の発生に注意する必要があります。年末から2月頃までの冷え込む時期については、注意するようにしています。ただし、連棟ハウスでも防除を行えば、問題になりませんし、それを上回る品種の特長があると考えていますので、これからも、冬の品種として使いたいと思います。





〉〉プリント用ページはこちら(PDF)

関連情報