種苗事業部 産地と栽培情報

2011年

早太りで前進出荷の出来る「MSI-856」ネギを栽培して

長野県
JA上伊那
小出 順誠

産地の概要

上伊那地域は長野県の南部に位置し、天竜川が中心に流れ、西に木曽駒ヶ岳、東に仙丈岳を望む準高冷地です。標高は600~1,000m、夏場も夜間は気温が下がり、日中と夜間の温度較差があり、野菜や果実の食味については、評価が高いです。
栽培品目は稲作が主体で野菜、果樹、花卉等、野菜ではアスパラガスやスイートコーン、ブロッコリーなどを主力に約30品目があります。利用耕地は水田転作圃場が多く、水利が得やすく、野菜栽培に適しています。

長野県 JA上伊那 小出 順誠

 

白ネギ栽培取組みの経緯

白ネギ栽培については、平成12年頃から取組み始め、平成21年には約43haまで拡大してきました。
白ネギ栽培拡大の背景には、水田転作品目としての位置づけがあります。稲作を主体にした上伊那においては、ネギはコメの収穫後の10月から収穫期となり、また、収穫期に幅があるため女性や高齢者においても取組みやすい品目です。また、生育最盛期となる夏期の夜間が冷涼のため他県産地に比べ肉質・食味が優れており、市場での評価も高く、関東・関西の大消費地からの引き合いが大変強くなっています。
また、白ネギ栽培は上伊那中部地域で始まり、最近では、各地域に設立された営農集団でも導入され、上伊那全域に産地が拡大してきています。

 

栽培の概要

(1)作型
当産地で生産するネギは根深タイプの白ネギで、土寄せを年間5回ほど実施し、軟白部分を30cm以上確保しています。
作型は、2月播種→8月収穫(夏ネギ)、および3月以降播種→10月以降収穫(秋冬ネギ)の2タイプがあります。
(2)機械化
ネギ栽培は他品目に比べ機械化が進んでおり、播種、定植から土寄せ、収穫、荷造りに至るまでほぼ一貫して機械化が可能です。特に収穫、皮むき、結束作業については、年間作業時間の大半(74.5%)を占め、この作業を省力化することがネギの面積拡大の要因となっています。
(3)施設整備
平成17年度にネギの皮むき調製を大型プラントにて処理する共同選荷施設を上伊那中部(伊那)へ設置し、これにより、ネギ生産の中で、作業時間、労力負担の大きかった皮むき、結束、荷造り作業を共選とし、生産者負担を軽減し、面積拡大をさらに加速させました。
(4)安全・安心生産
JA上伊那・野菜部会では、独自の自主基準により使用農薬数を制限し、農薬の安全使用を呼びかけ、栽培管理日誌の記帳・確認体制を徹底しています。また、独自に毎月残留農薬検査を実施し、安全・安心生産を徹底しています。

「MSI-856」の導入経緯

ネギの作付面積を拡大するにあたって、作期拡大(リレー出荷)の必要性がありました。8月収穫の夏ネギから11月どりの秀逸までは収穫が途切れることから、この間をうめる品種を探していました。そのとき、㈱武蔵野種苗園から「MSI-856」を紹介され、数品種とともに品種試験をしたところ、早太りの点が高く評価され採用されました。
「MSI-856」の特性は、耐暑性に優れ生育が早い、草姿は立性で草勢は旺盛、太りがよく収量性が高い、などが上げられます

MSI-856は耐暑性に優れ、秀逸より太りが早い

収穫作業。掘取り後、結束して共同選荷場へ運ぶ