種苗事業部 産地と栽培情報

2020年

【香川県観音寺市】黄化葉巻病に強く、秀品率高い収穫が見込める『有彩014』(トマト)を栽培して

観音寺地区
トマト部会
部会長
安藤 浩孝

 

「有彩014」は比較的伸びのゆっくりした品種

なので、作業の手が回りやすく扱いやすい品種

 

 

 

地域概要


 

香川県観音寺市は、県の南西部に位置し、西は瀬戸内海、南は讃岐山脈に接しており四国のほぼ中心に位置しています。市の中央部には三豊平野が広がり、東部から西部に向かって財田川、柞田川などの河川が流れ、豊かな田園地帯となっており、河口付近に市街地が形成されています。温暖少雨の瀬戸内海式気候に恵まれた自然条件を高度に活用すると共に、経営規模の零細性を土地の高度利用と施設園芸などの資本集約経営で補完し、米麦を基幹に野菜、果樹、畜産など複合経営を中心に生産性の高い農業を展開しています。市内でも特にトマトの栽培が盛んな地域である有明地区は、海岸沿いのため水はけの良い砂地を利用し、トマトの他にはセルリーやキュウリなど、高品質な作物が栽培されています。

 

産地概要


 

香川県農業協同組合は、香川県下の43JAが合併して平成12年4月に設立し、その後、さらに2JAと合併し、平成25年4月に県単一農協として再スタートを切りました。

香川県の農家1戸当たりの平均耕地面積は全国平均の半分以下ですが、農地の効率的な利用や経営の複合化を行うことで生産性の高い農業を営んでおり、恵まれた気候条件などの下、レタスや金時にんじん、セルリーなど、全国に誇る農産物を生産しています。

JA香川県観音寺地区トマト部会は、部会員13名、ハウス280aでトマトを栽培しており、メインとなる5月〜8月収穫の半促成栽培と10月〜翌年6月収穫の抑制長期栽培で年間約320tを関西や岡山県に出荷しています。

 

 

導入の経緯


 

以前まで使っていた品種では、節間の長さや果形の乱れなどの弱点がありました。そこで、それらの弱点を克服した品種を探るために平成29年に様々な種苗メーカーの黄化葉巻耐病性品種を試験したところ、「有彩014」が他の試験品種より結果が良く、翌年の平成30年から本格的に導入していくことになりました。導入率は年々上がっており、今では部会員の大半が導入し、作付けの7割強まで増えています。

 

 

栽培してみて


 

「有彩014」は比較的伸びのゆっくりした品種なので、収量性を求めるというよりは作業の手が回りやすく扱いやすい品種なので、家族経営が基本となる当部会にはぴったりと当てはまりました。

また、摘果をしっかりとすれば特に問題なく栽培できる点も気に入っています。

 

独自の取組やこだわり


 

当部会では、作業の省力化を図るために養液土耕栽培システムの導入を推進しています。養液土耕栽培システムとは、潅水、施肥作業をシステムにて自動で行い、特殊な土壌や施設を必要とせず、従来の土耕栽培法よりも少ない肥料使用量で栽培することができ、基肥や土壌改良剤を添加する定植準備作業が不要となり、作業の省力化を図ることができます。

また、作物は効率良く水と肥料を吸収するため、ストレスがかかりにくく、増収や品質向上が期待できます。現在では当地区の大半の生産者が導入しており、省力化はもちろん、品質向上に大きく貢献しています。

部会の取組として、出荷の始まる5月から7月までの期間は週に一度は部会員全員が選果場に集まり、出荷物の品質確認や病害虫、等級などについて協議を行うことで、部会内の意識統一、品質の維持・向上を図っています。このように小まめに集まれるのも小さな産地でまとまりのある部会だからこその強みだと思っています。

さらに、出荷用段ボールには生産者名と番号を記入し、問題があった際に迅速に対応できる体制を整えています。

 

今後の展望


 

武蔵野種苗園には、有彩014以上に品質・収量・食味が改良された品種を期待するとともに、当部会としても安定した品質と出荷量の維持向上を目指し、更なる発展を図っていきたいと考えています。