種苗事業部 産地と栽培情報

2019年

【岩手県遠野市】河童の故郷で、ニラ生産に取り組む

岩手県 JAいわて花巻遠野地域営農センター
遠野地域野菜生産部会 ニラ専門部
菊地 啓造

 

 

地域概要


 

遠野市は、岩手県南東部の内陸に位置し市のほぼ全域が北上川の支流である猿ヶ石川の最上流域にあたり、中央部は北上山地最大の盆地である遠野盆地となっています。また、岩手県で2番目に高い山である早池鋒山の一部も市域にあたります。気候は、北上高地に位置しており、冬季の放射冷却が起きると-2o℃近くまで下がることもあり、また、太平洋側気候ではありますが、豪雪地帯対策特別措置法において豪雪地帯に指定されています。

また、柳田國男の「遠野物語」の舞台になった町としても有名で、河童や座敷童などが登場する「遠野民話」が現代に伝わっています。

 

 

栽培に至る経緯


 

私の祖父の代から農業を生業として生計を立てて参りました。祖父の時代は、酪農を主として行い、父の代より酪農とイネ・麦を取り入れて規模を拡大していきました。私自身も約52年前に就農して野菜栽培を始め、最初はキャベツから始まり一本ネギ、レタスと変遷していき現在はナガイモ、トウモロコシとニラの栽培を主軸に行っております。ニラ栽培に取り組み始めて今年で13年になります。ニラ専門部の発足時、10名にも満たなかった生産者の人数も少しずつ増えていき現在は40名まで拡大して県内最大出荷量を誇っています。

 

 

 

栽培の概要


 

主な作型は5月~10月までの露地の夏どり栽培となります。

ハウスを利用して3月から出荷を行っている部員もおります。

私の場合は、露地とハウスを組み合わせての出荷体系を取っており、労働力は私、妻、娘の3人が基本で、普段別の仕事をしている娘の夫が時間がある時に手伝ってくれます。栽培面積は露地とハウスを入れて10aで行っています。現在、ニラの育苗に関しては農協で生産を請け負っており3月末頃播種で5月頃定植になるように準備を行ってくれています。私の場合、レタス栽培もおこなっているためセルトレイでレタスとニラの育苗を自前で行っており播種と定植時期は農協の苗と同じになります。

露地とハウスを組み合わせて出荷を行っているためハウスは定植してから3~4年収穫を行い、露地は3分割して常に新植、2年目、3年目の株が圃場にある状態を保っています。

一般的なニラ栽培ですと、株間25cm×条間45cmが該当するかと思いますが、私の場合中耕作業や薬散で機械を使用できるように条間を70cmと通常よりも広めに設定して栽培を行っております。出荷時期はハウスが3月上旬~5月中旬までで、露地が5月中旬から9月中旬までを基本の出荷としており、抽苔期の6月中旬~7月下旬までは無理に収穫をしてしまうと後半の収量に影響が出るため収穫はしないで花刈りや薬散などを行っています。

出荷規格は100gをFG袋に詰めて4kg箱での出荷となっています。農協の葉物野菜の集荷は午後からなので午前中に収穫調整を行い、農協の真空予冷庫に持ち込み翌日市場へ出荷をしていきます。

 

現状の課題及び新品種について


 

夏どりの栽培が基本で、使用している品種は「パワフルグリーンベルト」だけとなっているため抽苔期にはどうしても出荷量が落ちてしまいます。今回、(株)武蔵野種苗園の営業さんから新品種「エナジーグリーンベルト」の紹介を頂き、抽苔期がずれる夏用品種が新たに出てくるという事で抽苔期の出荷量減という問題を解消してくれるのではないかと期待をしています。

 

 

 

今後の展望


 

栽培技術の向上などを目的とした先端地視察や(株)武蔵野種苗園や普及センターを招いての現地検討会や講習会を今後積極的に開催して、遠野ニラの発展により一層邁進していきたいと考えています。