種苗事業部 産地と栽培情報

2013年

「イーハセブン」の生産

高冷地における、ボリューム・作業性抜群の夏播きホウレンソウ

栃木県開拓農協
鶏頂山生産組合
寉見 一雄

地域の概要

 栃木県開拓農協・鶏頂山生産組合は鬼怒川温泉で有名な日光市(旧藤原町)にあり、生産者数が15戸、作付面積が約68haです。標高約1,200mの高冷地であるこの地では、夏でも冷涼な気候を活かし、ホウレンソウやダイコンなどを作っています。

栃木県開拓農協の成り立ち

栃木県開拓農業協同組合は現在、肉牛・肉豚・野菜を中心に生産している組合です。
 なぜ“開拓”という名がついているかといえば、それは昭和20年の終戦後に未開の山間僻地に入植し、大地を開拓した人たちが作った組織が礎となっているからです。電気も水道も満足な道路もない、山林原野に裸一貫で挑んだ初代の開拓者たちの艱難辛苦は言葉に言い尽くせないものがありました。
 それらの苦労を乗り越え、自然災害にも耐えながら“開拓精神”を発揮して、既存農家をしのぐほどになりました。現在では、戦後入植した人々の遺伝子を受け継いだ開拓農家や、組合の理念に賛同する専業農家を組合員として日々活動しています。

ホウレンソウの栽培

 ホウレンソウの栽培は父の代から行っており、私の代になって30年になります。10年くらい前まではダイコンも栽培していましたが、今はホウレンソウ一本になりました。
 雨よけハウス栽培で間口5.5mハウスを52棟、総計1.8haになり、冬は雪が降ってしまい栽培が出来ないので春・夏・秋に1ハウス1回転ずつ栽培し、年間3回転としています。主力品種は4~5品種を使い分けています。労力は私と妻と息子、パートさん12名の計15名です。


ホウレンソウの栽培概要

 栽植密度は間口5.5mハウスで4うね(1うね8条)で計32条、条間×株間=15cm×8cmです。8条播きの播種機で1ハウス2往復、約30分で播種しています。
 堆肥は有機JAS取得の植物由来のものを年2回、1棟当たり約1t入れています。タイミングは1回目と2回目の播種時で、多いハウスには約2t入っています。畜糞堆肥は雑草の種子が入っていることがあるので使用していません。肥料は極力抑えており、1ハウス当たり化成肥料20kgを1袋使用しています。病害虫防除に関しては播種前の1回だけで後は収穫まで行わない方針です。
また、近年夏場が非常に暑いことから遮光ネットを使用している産地も多いですが、鶏頂山は標高が高いため夏場でも気候が安定しており、遮光ネットは収穫時に使用しているだけで、生育中は使用していません。
 播種は1日おきに約7a分を播種しています。夏場は灌水チューブを使用して40分ほど灌水してから播種を行っています。天候にも左右されますが、1時間の灌水だと少し長すぎでカビなどが発生してしまう場合があるため、当圃場では40分程度がベストな時間になります。播種後、換気も兼ねてハウスのサイドは開けておきます。雨が降るときは閉めておきます。
 夏場は生育が良く播種後30日前後で収穫になります。1日でハウス1棟分を収穫します。パートさん達がハウス内で収穫と調製を行いコンテナに入れ、自宅の作業場に車で運びます。袋詰めは、FG袋が土で汚れることや衛生面の観点からハウス内で行わず、作業場にある機械で行っています。機械詰めの場合、ホウレンソウが多少伸びてしまっても袋のフィルムの切る位置を変えてやれば問題ないという良さがあります。袋詰めしたものは、段ボール箱に入れ予冷庫に入れます。1ケース25袋入りで、日量100~150ケースになります。





「イーハセブン」を栽培して

 「イーハセブン」は昨年、初めて栽培しました。毎年、高冷地ほうれんそう品種比較展示圃の現地検討会を行っており、そこでボリュームが出る品種だと感じました。本格的に使用し始めたのは今年からで真夏の主力品種としています。7月から8月のお盆前まで「イーハセブン」を播種し、9月中旬まで収穫予定です。「イーハセブン」の良い点としてはボリュームが出る点、軸がしなやかで折れにくく下葉等の調製が行いやすいため作業性が非常に良い点があげられます。また、ボリュームが出るため束数も多くなるのもうれしい点です。
 ただ、「イーハセブン」は8月のお盆を過ぎてから播種すると生育が遅くなり日数がかかってしまうため、播種幅が狭いというところが難点です。今後の要望としては播種幅のもう少し広い、出来れば9月まで播種できる品種を開発してもらいたいです。


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