小カブ「桃寿」の品種特性と栽培のポイント
(株)武蔵野種苗園 新治育種農場
河埜 祥太
はじめに
カブの品種は大きさで分けると小カブ、中カブ、大カブと大まかに3種類に分類され、さらに赤カブや青首カブなど球の色によっても様々な種類に分けられます。その中で、特に多く栽培されているのは関東地域で株の全体生産量の約3割を占める小カブになります。小カブの特徴はその軟らかい肉質で、大きなカブ品種よりも甘味が強い傾向があります。そのため、漬物などの加工食品以外にも生食等様々な用途があります。
一方で赤カブは色鮮やかな球色が魅力ですが肉質がしっかりとしているため生食には向かず、酢漬け等が一般的な使用法になります。
この度、分類的には赤カブに近いピンク色の小カブ品種「桃寿」を開発いたしました。
その球色はもちろんですが小カブサイズで収穫できるので肉質は赤カブよりも軟らかく、見た目もかわいらしい品種になります。近年では直売所などでも様々な色のカブを見かける機会が増えましたが、この品種も直売所や家庭菜園などで非常に面白みのある品種となりますので、今回のご紹介がひとつのきっかけになれば幸いです。
品種特性
「桃寿」ピンク色の秋~春まき小カブ品種
- 球全体がピンク色になり見た目が華やか。
- 肉質はしっかりしており赤カブと比べると軟らかいため生食用としても利用できる。
- 小カブと同じ作り方で栽培できる。
「桃寿」は球全体がピンク色に色づく小カブ品種となります。秋撒き栽培が基本となりますがトンネル等を利用することにより春どり、春まき栽培も可能です。球の形状は厚みのある厚扁円形でまとまりがあります。地上部は通常の小カブ品種と比較すると旺盛なため、やや減肥する必要がありますが、栽植距離や基本的な栽培方法は小カブ品種と同じ作り方で栽培することが可能です。
球の内部は完全な白色ですが、赤カブと同様に酢漬けにすると全体に色が回ります。赤カブの要に濃い赤色ではないため桜色の酢漬けになります。また、食味は赤カブよりも軟らかいため、小カブのように煮物や炒めもの、スープ等に利用することもでき、サラダに彩として使用してもおいしくいただけます。
栽培のポイント
①土作り
土壌酸度の適応幅はpH5.0~pH7.2と広く、粘土質以外の土壌であれば基本的に栽培可能ではありますが、pHは6.5~7.0でやや肥沃な排水性に富む土壌を好みます。そのため、牛糞堆肥やバーク堆肥など土壌改良に適する堆肥を定期的に活用し、石灰などにより酸度を調整してください。ただし、堆肥を過剰投入すると酸度の低下が起こりやすく、また土壌の物理性も悪化してしまうため注意してください。
また、収穫時期に降雨が集中するとれっこんを起こす可能性があります。排水が悪い土地で栽培する際には高畝にする、明渠を設置するなど排水対策を実施してください。
②播種
発芽をそろえるために土壌が十分湿っているときに播種を行ってください。灌水設備がある場合は播種後にしっかりと灌水すると発芽を揃え、収穫物の品質を向上させることが可能です。栽植距離は条間12cm~15cm、株間12cm~15cmを基準とし、球形が乱れやすくなる、病気が発生しやすくなるなど品質に悪影響を及ぼしますので、極端に株間を狭くしすぎないようにしてください。他の小カブ品種と比較すると種子が大きいため、播種期を使用して播種する場合は播種機の径にご注意いただき、越智具合に村が出ないようにしてください。
③水分管理
発芽を揃えるために播種から生育初期は出来るだけ土壌表面を乾燥させないようにしてください。球の肥大が開始してからは水分量が多すぎると球形がまとまりづらくなるため乾燥しすぎないように注意は必要ですが灌水は控えてください。
④温度管理
カブの発芽適温は20~25℃、生育適温は15~20℃であり、30℃を超えると発芽や生育が抑制されます。高温期は発芽不良を起こす可能性もあり、また、収穫物の品質が低下するため栽培は控えてください。また、低温期の播種では保温資材を活用し地温を確保してください。
栽培の注意点
- 高温期の栽培は球のピンク色が綺麗に発色しないばかりか形状がまとまらず品質が著しく低下します。特に中間地では夏季の栽培は避けてください。また、球色に関しては栽培時の気温より濃くなることや淡くなることがあります。
- 肥料に関しては、もともと旺盛な品種のため通常の施肥量よりも1~2割ほど減肥して栽培してください。
- ス入りのやや早い品種となるため、取り遅れにはご注意ください。また、抽苔の遅い品種ではないため、早撒きや取り遅れにより抽苔する可能性があります。
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