種苗事業部 品種特性と栽培のポイント

2018年

ホウレンソウ「ブラッシュアップ」の品種特性と栽培のポイント

(株)武蔵野種苗園 新治育種農場
佐藤 光朗

はじめに

ホウレンソウの重要病害であるべと病は、春や秋に天候不順が続いた場合に多発しやすく、山地に甚大な被害をもたらします。ホウレンソウの安定生産にはべと病抵抗性は必要不可欠な要素となりますが、近年は抵抗性を打破する新レースの出現が早く、生産者からは耕土な抵抗性を備えた品種を望む声が多くなっています。そのような要望に応えるため、べと病(R1~12、14~16)抵抗性を備えた春・秋まき用品種「ブラッシュアップ」を育成しましたので、今回ご紹介させて頂きます。

 

品種特性


「ブラッシュアップ」

大葉で株張り抜群! 春・秋まき用多収品種

 

  • 大葉で葉柄が太く株張りが良いため収量性が抜群。
  • 葉色は濃緑で光沢が強く、葉裏まで葉色が濃く、荷姿が美しい
  • 葉型は中間葉で浅い切れ込みが1~2段入る。
  • 秋~年内どり、春どり栽培で最も特性を発揮する。
  • べと病(R1~12、14~16)の抵抗性を持つ。

 

「ブラッシュアップ」は、べと病抵抗性に優れるだけでなく、収量性や作業性など実用形質も伴います。特に収量性については、葉柄の太さ・葉和の多さに加えて、大葉で葉肉が厚く葉でも収量が稼げる点が特徴です。また、葉色は濃緑色で葉裏まで濃く、光沢が強いため荷姿も美しいです。

秋~年内どり・春どりで最も特性を発揮しますが、ハウスやトンネル栽培なら冬期も栽培が可能です。冬期はじっくり生育するため、より一層収量は増して、在圃性にも優れます。また、春・秋用品種としては比較的抽苔が遅いため、播種時期が長く使いやすい品種になります。

 

作型別栽培のポイント


 

「ブラッシュアップ」の播種時期は、中間地で8月下旬~4月中下旬と長い点も特徴です。以下に作型別の栽培のポイントについて記します。

 

 

秋まき

  • 秋まきでは中間地で9月上旬~10月中旬が最適播種機となり、品種特性が最も発揮されます。
  • 10月上中旬以降に播種する場合は、天候や生育状況に合わせて被覆資材を活用してください。

 

春まき

  • 春まきでは中間地で1月中旬~3月中旬が最適播種期となります。
  • 気温上昇期となる春まきでは、栽植距離はやや広くした方が品質、収量ともに安定します(条間15~20cm、株間5~7cmを目安に調節してください)。
  • 3月中旬以降の播種では、在圃期間が短くなるので取り遅れのないように適期での収穫を心がけてください。

 

冬まき

  • 11月~12月まきではじっくり生育するため、収量性は高く、また春先でも極端に間延びしないため在圃性に優れます。
  • 株間が広過ぎると草姿は開帳気味となり作業性が落ちるため、栽植距離はやや狭くしてください。
  • 厳冬期の栽培ではハウスやトンネル内の温度を十分に確保して、生育を停滞させないように注意してください。

※まずは春と秋の最適播種期で使用して品種特性を十分に把握した上で、冬季の栽培にも取り組んで頂ければと思います。

 

 

栽培上の注意点


  • 春や秋の栽培では、虫害が多く品質の低下を招くため注意してください。徳にケナガコナダニ類、アザミウマ類、アブラムシ類が問題となります。防虫ネットを使用すると共に早めの薬剤散布を行い予防に努めましょう。
  • 広範囲なべと病レースに対応していますが、抵抗性品種であっても早めの薬剤散布を行い予防に努めることが大切です。