種苗事業部 品種特性と栽培のポイント

2014年

ハイパーグリーンベルトの品種特性と栽培のポイント

(株)武蔵野種苗園 新治育種農場
小堀 賢吾

はじめに

ニラはスタミナ料理や鍋料理として、年間を通じて需要があります。それに対応するようにニラ産地では周年栽培化が進み、1年中いつでも手に入るようになりました。春~夏では露地での収穫が可能となっており、日本全国で栽培が行われています。一方、秋~春の収穫ではハウスが必要となり、栽培される地域が限定されるため、全体的な出荷量は減少します。そのため、取引価格も高い傾向にあり、生産者にとって非常に魅力的な作型といえます。
新品種のハイパーグリーンベルトは、秋~春の作型において特性を発揮する品種です。低温期の伸長性に優れるため収量性に富み、葉色が濃いことから品質に優れたニラが収穫可能となります。

 

品種特性

ワンダーグリーンベルトの改良タイプ。厳寒期における低温伸長性に加えて、葉色が濃く、葉肉が厚い。従来品種と比較して分げつ数が少ないため、収穫が長期にわたっても、過剰な分げつによる葉幅、茎の太さの低下が少ない。

 

①休眠はほとんどなく、低温伸長性に優れ、冬期施設栽培に適する。ミラクルグリーンベルトよりも伸長性が強く、ワンダーグリーンベルトと同程度である。

 

②ワンダーグリーンベルトと比べて葉色が濃く、葉肉が厚いため市場性が高い。

 

③葉幅は非常に広く、1番刈りで1.4cm程度ある。収穫を重ねても極端な葉幅の落ち込みが少なく、4回目の収穫でも0.8cm以上を保つ。

 

④草姿は立性で葉鞘部は長く、収穫・調製の作業が容易である。

 

⑤分げつ数の増加が緩やかで、長期の収穫においても分げつ数が過剰になりにくく、1本当たりの重量がのる。

 

⑥抽苔期は7月下旬頃で、連続性はない。花茎は太く、空洞が少ないので、花ニラとしての商品価値がある。

適応作型

栽培上のポイント

①発芽までの土壌乾燥は、発芽不良を引き起こすので、乾かないように灌水管理を行う。また、品種に限らず初期生育は緩慢なため、生育を促すよう灌水を適宜行う。

 

②草勢が強く、施肥量が多いと倒伏しやすいので、窒素を抑え、リン酸を多く施用する。ワンダーグリーンベルトを使用しているなら同じ施肥量、スーパーグリーンベルト・パワフルグリーンベルトを使用しているなら1割くらい施肥量を減らす。また、堆肥は10a当り3~5t程度の施用が望ましい。

 

③分げつ数が非常に少ないため、植付け本数は3~5本程度とする。また、定植時期が遅れると、適正な分げつ数が確保できず、収量低下の原因となるので、適期の定植に努める。

 

④本品種は低温期の収穫に適し、最適期は10~3月収穫の施設栽培である。4~9月の栽培も可能だが、極端な暑さ、乾燥の条件下では品質が落ちるため、雨よけ栽培を推奨する。

 

栽培上の注意点

抽苔期は7月下旬となるが、定植した翌々年以降は6月頃より抽苔が始まるため、株を3年以上利用する際は、これに注意する。

 

【スーパーグリーンベルトとの比較】

草姿は極立性で、草勢は強く低温伸長性に優れる。 葉色は同程度、葉幅は広く、葉鞘部は長く収穫・作業性に優れる。 分げつ数は少なく、半分程度なので定植本数は中間地標準として3~5本とする。

 

【ワンダーグリーンベルトとの比較】

厳寒期での低温伸長性は同程度である。
葉鞘部は若干短く、葉幅はやや狭い。葉色濃く、葉肉厚い。
分げつ数は少なく、初期収量はワンダーグリーンベルトよりも劣るため、定植本数を調節する。

 

【パワフルグリーンベルトとの比較】

眠が浅く、冬期施設栽培が可能。
葉鞘部は若干長く、葉肉は若干薄いため、露地栽培はできないので雨よけ栽培を推奨。
分げつ数はやや多く、収量多い。抽苔期が異なるので夏ニラとして連続的に収穫可能。

 

 

 

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