種苗事業部 品種特性と栽培のポイント

2018年

「エナジーグリーンベルト」の品種特性と使い分け

(株)武蔵野種苗園 新治育種農場
小堀 賢吾

 

はじめに

ニラは夏はスタミナ料理、冬は鍋料理として、年間を通じて大きな需要があります。これに対応するようにニラ産地では周年栽培化が進み、1年中いつでもニラが手に入るようになりました。春~秋においては露地での収穫が可能となる為、日本全国で栽培が行われていますが、葉先の枯れ、日持ち性の低下など、品質の低下が問題となっています。

予告品種のエナジーグリーンベルトhじゃ、春~秋の作型において特性を発揮する品種です。耐暑性に優れ、葉色が濃く、葉肉が厚い為、高温期においても品質が高いニラが収穫可能になります。

 

 

1.品種特性

 

パワフルグリーンベルトの改良タイプとなる。高温期における耐暑性に加えて、葉色が濃く、葉肉が厚い。

パワフルグリーンベルトと比べて休眠が浅く、より幅広い作型に対応できる。

①草姿、葉色、葉肉の暑さ、葉鞘部の長さ等はパワフルグリーンベルトに似る。

②抽苔は関東平坦地で5月下旬から始まり、6月中旬に開花最盛期となる。抽苔の連続性はない。

③分げつ数はパワフルグリーンベルトと同程度で、やや少ない。

④休眠はパワフルグリーンベルトと比べて浅く、秋冬どりも可能である。

 

 

2.適応作型

 

冬どり:3月中旬~4月上旬まき、6月中旬~7月上旬定植、翌年1月~収穫

夏どり:①3月中旬~4月上旬まき、6月中旬~7月上旬定植、翌年7月~10月収穫 ②12月~1月まき、4月定植、8月~10月収穫

秋どり:2月まき、5月定植、10~11月収穫、2年目および3年目の春および9月~11月収穫

 

3.栽培上のポイント

 

  1. 発芽までの土壌乾燥は、発芽不良を引き起こすので、乾かないように灌水管理を行う。また、品種に限らず初期成育は緩慢な為、生育を促すように灌水を適宜行う。
  2. 草勢が強く、施肥量が多いと倒伏しやすいので、チッソを抑え、リン酸を多く施用する。当社販売のニラ専用緩効性肥料を使用する事で、肥効が安定し、徒長を抑え倒伏のリスクを軽減できる。また、堆肥は10a当り3~5t程度の施用が望ましい。
  3. 分げつ数が非常に少ない為、植え付け本数は3~5本程度とする。また、定植時期が遅れると、適正な分げつ数が確保できず、収量低下の原因となるので、適期の定植に努める。
  4. 本品種は高温期の収穫に適し、適期は4~10月収穫である。休眠は浅く冬期のハウス栽培も可能だが低温伸張性はワンダーグリーンベルトと比べて劣る。

4.最後に

 

高知大学の受田教授の研究によるとニラに含まれる物質が胃炎、十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因の一つとなるピロリ菌に対して増殖抑制効果を示すことがわかっています。人間が摂取しての効果はまだわからないものの、今後機能性食品としてニラが注目され、消費拡大につながることが期待されています。

今回ご紹介しました新品種のエナジーグリーンベルトが高品質ニラの周年出荷、ニラの消費拡大、また健康増進の一助になればと思っています。