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2009年2008年
農薬に関するご注意

カブ・ダイコン主要害虫の被害症状と防除対策

副所長 根本 久

埼玉県農林総合研究センター

副所長 根本 久

はじめに

 野菜の栽培期間は数十日から数ヵ月と幅があり、この栽培期間は天敵の活躍できる期間と比例していて、栽培期間が短いものと栽培期間が中程度のものでは天敵の活動を期待できる度合いが異なる。栽培期間が短いカブでは土着天敵の働きが小さいが、栽培期間が中程度のダイコンでは土着天敵の活動を期待することが可能である。このことを意識すると、殺虫剤の使用回数を格段に減らすことが可能である。

カブ・ダイコンの害虫防除法

1.ダイコンの防除法の要点

 ダイコンではクモ類が重要な天敵で、クモ類が十分働ける環境を作る必要がある。天敵が少ない場合は、畑の周囲に額縁状に白クローバー(シロツメクサ)を配置すると、ゴミムシ等の天敵を増やすことができる。殺虫剤使用については、皆殺しタイプの殺虫剤の使用を控え、土着天敵を温存するために天敵に悪影響がない選択的な殺虫剤の利用を行う。
  ヨトウムシ類やウワバ類の寄生蜂類としては、卵寄生蜂やコマユバチ類が、捕食性天敵としてはクモ類、アシナガバチ類、ゴミムシ類、アマガエルなどがあり、コナガの捕食性天敵としてはクモ類が重要である。ヨトウムシ類やウワバ類では、緑きょう病菌が有力な死亡要因と考えられる。これらの天敵の働きを阻害しないようにすると、薬剤の使用を大きく減らすことが可能である。ヨトウムシ類やウワバ類、モンシロチョウ対策には、アブラナ科害虫の有力天敵であるクモなどに悪影響が少ない、IGR剤やBT剤等の選択性のある殺虫剤を使用する。

2.カブの防除法の要点

 カブは栽培期間が短く、天敵の活躍に大きく期待することが難しいので、施設化したり防虫ネットを利用して、害虫と作物の触れる機会を減らす戦略とする。
  カブでは播種後に0.8mm目以下の細かい編み目の防虫ネットをトンネル栽培したり、施設栽培ではハウス開口部に防虫ネットを展張して成虫の産卵を防ぐ。大型ハウスなどで収穫時期を少しずつずらして栽培すると、生活環がとぎれることなく維持され被害が大きくなるので、ハウスの規模は一作毎に採りきる程度とする。幼虫に対しては植え付け時にテフルトリン粒剤を土壌処理したり、発生時に登録のある散布剤を処理する。

アブラナ科野菜栽培でのシロツメクサの額縁配置 カブなどでの防虫ネットの利用

アブラナ科野菜栽培でのシロツメクサの額縁配置

カブなどでの防虫ネットの利用

カブ・ダイコンを加害する害虫の生態

 カブやダイコンには、モンシロチョウ、コナガ、ヨトウガ、ハスモンヨトウ、タマナギンウワバ、ハイマダラノメイガ、カブラハバチ、ナモグリバエ、キスジノミハムシ、モモアカアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ等が加害する。これらの害虫の生態と防除について簡単に説明する。

 

1. モンシロチョウ

1) 発生生態

 北海道などを除く平地では、春に発生が多く夏には気温の上昇と食草の減少に伴い個体数が減少し、秋に復活するものの、春ほどは多発しない。これに対し、北海道や高冷地では夏期に個体数が増加する。

2) 被害状況

 若齢幼虫は摂食量が少なく被害は目立たないが、4齢以降の老齢幼虫は摂食量が多く被害を出しやすい。平地では、春の多発時の被害が大きくなる傾向がある。被害作物周辺に吸蜜植物が多くあると、被害が大きくなる。

モンシロチョウの終齢幼虫

モンシロチョウの終齢幼虫

モンシロチョウの卵 モンシロチョウの蛹

モンシロチョウの卵

モンシロチョウの蛹

モンシロチョウの成虫

モンシロチョウの成虫

幼虫体外に脱出後形成されたアオムシサムライコマユバチの繭

幼虫体外に脱出後形成されたアオムシサムライコマユバチの繭

モンシロチョウ終齢幼虫から脱出するアオムシサムライコマユバチの幼虫

モンシロチョウ終齢幼虫から脱出するアオムシサムライコマユバチの幼虫

モンシロチョウ幼虫を捕食するアシナガバチ

モンシロチョウ幼虫を捕食するアシナガバチ

食葉性害虫の捕食者アマガエル

食葉性害虫の捕食者アマガエル

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2. コナガ

1) 発生生態

 産卵は葉脈や害虫の食痕に一つずつまたは数個ずつ産み付ける。幼虫は細長い紡錘形、体色は淡黄緑色〜緑色で、休眠しない。食草はアブラナ科作物である。国内では全国に分布し、北関東以北では夏期にピークがある一山型、関東以南では春と秋にピークがある二山型の発生パターンである。露地では夏から秋に発生し、施設では冬期にも発生する。冬の個体は大きく夏の個体は小さい。
秋のピークが見られない場合もある。

カブ葉上のコナガ幼虫

カブ葉上のコナガ幼虫

2) 被害状況

 幼虫が葉裏から食害し薄い表皮のみを残すため、食害部が白く見える。若齢虫はやわらかい芯葉部等を好むため、苗が小さい時期の多発は被害が大きくなる。

触れると敏しょうに逃げるコナガの幼虫

触れると敏しょうに逃げるコナガの幼虫

コナガの捕食性天敵ハエトリグモ コナガの捕食性天敵ウズキコモリグモ

コナガの捕食性天敵
ハエトリグモ

コナガの捕食性天敵ウズキコモリグモ

コナガの寄生蜂サムライコマユバチの繭 コナガ幼虫を捕食するゴミムシの幼虫

コナガの寄生蜂
サムライコマユバチの繭

コナガ幼虫を捕食するゴミムシの幼虫

 

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3. ヨトウムシ

1) 発生生態

 ヨーロッパ及びアジアの温帯地域、アメリカ合衆国に分布し、国内では北海道、本州、四国、九州に分布する。土中で蛹の状態で越冬する。北海道では6月上旬〜7月中旬、東北地方では6月に、関東以西では4月下旬〜5月下旬に羽化する。成虫は卵を葉の裏面に平面状に卵塊状に産付する。関東付近では年2化で、6月頃に幼虫が発生する。夏の高温下では夏眠し、第2回目の成虫は9〜10月頃に発生する。摂食植物は多く、イネ科以外の45科107種におよぶ植物を加害する。

集団で加害するヨトウムシ若齢幼虫

集団で加害するヨトウムシ若齢幼虫

2) 被害状況

 幼虫は2齢まで、葉裏に群棲して葉裏から表皮を残して食害し、食害部分の表面が白くカスリ状になる。3齢以降に分散し加害するが、摂食量も多くなる。老熟すると、土中や結球した株の内部に潜み、夜に出てきて加害する。

ヨトウムシの卵塊

ヨトウムシの卵塊

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4. ハスモンヨトウ

1) 発生生態

 卵塊として数回に分けて葉裏などに産下する。幼虫は2齢まで集団で、サトイモやナスでは葉裏を、アブラナ科野菜では葉表を加害することが多い。加害作物は果菜類、葉菜類、根菜類、豆類等で、80種以上を加害する。露地では夏から秋に発生し、施設では冬期にも発生する。本種は暖地性の害虫で、関東、東海地方以西で発生が多い。年間世代数は4〜6世代、越冬個体数は少ないが、暖冬時やハウスが多い地帯では越冬個体数が増す。

 

2) 被害状況

 2齢までは集団で葉裏から加害し、葉表から見ると、加害部分が白く透けて見える。それ以降は分散して加害し、幼虫の摂食量はおおきくなり、被害も大きくなる。7〜9月に高温の年に多発生し、多発時は雑食性が強くなり、あらゆる植物を食べ尽くす傾向がある。

カブ葉上のハスモンヨトウ終齢幼虫

カブ葉上のハスモンヨトウ終齢幼虫

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5. タマナギンウワバ

1) 発生生態

 卵は葉裏に1個ずつ産卵する。老熟幼虫の体形は頭部が小形で、胴部は後方へ向かうにしたがい太くなる。終齢幼虫は加害植物葉の裏面に粗い繭を作って蛹化する。加害作物はウリ科、アブラナ科、シソ科、エダマメ等で、80種以上を加害する。山間地や高冷地、冷涼地で発生が多い。年間発生回数は東北地方で3回、関西以西4〜5回といわれる。関東以西の平地では5〜6月と9〜10月に多く、夏期は少ない。高冷地などでは夏期に発生が多い。休眠はなく、暖地では各態で、寒冷地や高冷地では成虫や蛹で越冬する。

タマナギンウワバ幼虫

タマナギンウワバ幼虫

2) 被害状況

 2齢までは集団で葉裏から加害し、葉表から見ると、加害部分が白く透けて見える。それ以降は分散して加害し、幼虫の摂食量はおおきくなり、被害も大きくなる。7〜9月に高温の年に多発生し、多発時は雑食性が強くなり、あらゆる植物を食べ尽くす傾向がある。

緑きょう病に罹病したウワバ幼虫

緑きょう病に罹病したウワバ幼虫

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6. ハイマダラノメイガ

1) 発生生態

 幼虫は幼苗期の苗の芯部や成長点付近を食害する。株元や土中に筒状の繭を作り、その内部で蛹化する。加害作物はアブラナ科及びフウチョウソウ科の植物を加害する。暖地では年6世代内外発生し、8〜10月に個体数が増加する。夏期高温小雨の年に発生が多い。

2) 被害状況

 幼虫は幼苗期の苗の芯部や成長点付近の若葉を綴り併せて食害する。生育の進んだ作物では葉柄などに食入する。

ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ)幼虫

ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイムシ)幼虫

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7. カブラハバチ

1) 発生生態

 葉の裏側の葉縁部の葉の組織内に1個ずつ産卵する。幼虫は、1及び2齢が灰色、3齢以降は青みを帯びた黒、終齢幼虫は紫藍色となる。終齢幼虫は土中に長円形の土部屋内に繭を作り、蛹となる。加害作物はダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ等アブラナ科作物を加害する。平地では春と秋に発生し、高地など冷涼なところでは夏に多く発生する。幼虫が土の中に繭を作って、その中で越冬する。

2) 被害状況

 若齢幼虫は裏側から摂食し、老齢になると摂食量が多くなる。家庭菜園や無農薬栽培で発生が多い。

カブラハバチ幼虫

カブラハバチ幼虫

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8. ナモグリバエ

1) 発生生態

 雌成虫は産卵管で葉面に傷をつけ、葉の内部に1卵ずつ産卵する。幼虫は円筒形をした乳白色のウジで葉肉内をトンネル状に食い進む。加害作物はマメ科、アブラナ科、キク科、ナス科等、11科60種以上を加害する。春に発生が多く、夏に減少する。暖地では春から初夏にかけて4〜6回と秋に2回、高冷地等では年2〜3回の発生である。

2) 被害状況

 春のエンドウマメ等に寄生し、幼虫が各種野菜の葉肉内をトンネル状に穿孔し食害するため、食痕が白く透けて見え、エカキムシともいわれる。雌成虫は産卵管で葉面に傷をつけたり、吸汁のためにも産卵管で葉面に傷をつける。エンドウやスイートピー等では被害が目立つので、エンドウハモグリバエと呼ばれることもある。

カブの葉のナモグリバエ被害

カブの葉のナモグリバエ被害

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9. キスジノミハムシ

1) 発生生態

 根際に産卵し、卵から成虫羽化までは約1ヵ月かかる。成虫は体長2〜3oで、上翅は黒色で、背面に二本の黄褐色の縦紋を持つ。成虫は早春から発生する。前年に暖冬で、その年の6〜7月に高温少雨の年には、秋に発生が多くなる。高冷地や寒冷地では年2〜3回、関東以西の暖地では3〜5回発生すると考えられる。加害作物はダイコン、カブ、コマツナ、チンゲンサイ等アブラナ科を加害する。

ダイコンを加害するモモアカアブラムシ

カブ葉上のキスジノミハムシ

2) 被害状況

 アブラナ科の重要害虫で、成虫は葉に小さく食害し、幼虫は根の表面を食害する。

キスジノミハムシ幼虫によるダイコン根の被害 キスジノミハムシ成虫によるダイコン葉の被害

キスジノミハムシ幼虫によるダイコン根の被害

キスジノミハムシ成虫によるダイコン葉の被害

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10. モモアカアブラムシ

1) 発生生態

 主寄主はモモやスモモで、夏寄主はアブラナ科野菜ナス、ジャガイモ、ホウレンソウ、パンジー等多数。モモ等の主寄主の芽の近辺に産卵された受精卵で越冬し、2月中旬以降に孵化する。孵化した個体はそのまま樹上で、または、野菜や草花等の夏寄主に移り無性生殖を行う。加害作物はアブラナ科、ナス科、ホウレンソウ、マメ科、ウリ科等100種を加害する。露地では早春から秋にかけて発生する。

2) 被害状況

 寄生を受けたアブラナ科野菜等は生長が悪くなり、品質が著しく悪くなる。キュウリモザイクウイルスやカブモザイクウイルス等多くのウイルスを媒介する。

ダイコンを加害するモモアカアブラムシ

ダイコンを加害するモモアカアブラムシ

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11. ニセダイコンアブラムシ

1) 発生生態

 春に菜の花やキャベツに群生する。花穂、茎、葉裏などに大きなコロニーを形成する。関東以西では、キャベツなどの葉上で無翅胎生雌の形体で越冬する。北海道などの寒冷地では卵態で越冬することが多い。加害作物はダイコン、ハクサイ、キャベツ、カブ等アブラナ科を加害する。3月頃から徐々に密度を上げ、5月上中旬にはピークに達する。その後、6月以降気温の上昇とともに、個体群密度は減少する。関東以西では秋の発生は少ないが、北海道では7月下旬〜9月上旬にピークになる。

2) 被害状況

 寄生を受けたダイコンやハクサイ等のアブラナ科野菜等は生長が悪くなり、品質が著しく悪くなる。本種はキャベツで急速に個体数が増え、葉の間隙に潜り込み、著しく商品価値を損なう。

カブを加害するニセダイコンアブラムシ

カブを加害するニセダイコンアブラムシ

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